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鏡の迷路

掲載日:2025/10/31

ヴァレリアン王国は、かつて豊かだった。

野に花が咲き乱れ、川は命の光をたたえ、城の塔は雲の間から光の槍のように立ち昇っていた。


だが──

すべては、王アルデン四世が病に倒れた日を境に、変わってしまった。


太陽に焼けたはずの肌は、大理石のように白くなり、

王国中の医師、薬師、神殿の癒し手たちが

月の茶、竜の涙、黎明の祈りなど、あらゆる手段を尽くしたが、

奇跡は起こらなかった。


王は幾夜も意識を失い、呼吸は次第に細く弱くなっていった。


ある日──

王の老友であり、宮廷魔術師でもあるアルサーが、重い面持ちで王の枕元に現れた。

その声は年月にかすれながらも、王の寝室にしっかりと響いた。


「陛下……最後の望みがございます。」


「申せ……」

王はかすれた声で応える。


「“鏡の迷宮”と呼ばれる場所がございます。

その奥には、どんな病をも癒す“水”が湧き出ているのです。

ですが、そこから正気で戻った者はおりません。

迷宮は人の心を映す──己と向き合い、耐えられる者などほとんどいないのです。」


王は目を閉じ、静かに息をついた。


「……ならば、我が子らに決めさせよう。

この命に、それほどの価値があるかどうか。」


***


翌日──

王城の鐘が鳴り響いた。


玉座の間には、四人の王子と王女が集められた。


長男レオナード。

白銀の鎧と紅のマントを纏い、その目にはすでに王たる自覚が宿っていた。


次男マリウス。

金髪と傲慢な笑みを浮かべ、腰には小さな手鏡を吊るしていた。

彼にとって世界とは、己の写る鏡にすぎなかった。


第三子、王女エリラ。

絹と宝石で身を飾り、働いたことも、謙遜を知ることもない者。


そして末子、カエル。

灰色の麻服をまとい、物静かに立つ。

宮廷の者たちは彼を「無能」と見なしていた。


だが王は、弱りながらも強い意志で言った。


「我が子らよ──

魂と肉体を癒す水は、鏡の迷宮にある。

その水を持ち帰った者には、私の祝福と、王国の名誉が与えられる。」


上の三人は目配せをし、笑みを交わした。

その果実は熟れ落ち、手を伸ばせば届くのだと信じて。


だがカエルは、ただ深く頭を下げただけだった。

彼が望んでいたのは玉座ではなかった。

──父の笑顔、それだけだった。


***


翌朝、四人は旅立った。


レオナードは鉄の甲冑をまとった黒馬に乗り、

マリウスは金の羽飾りを付けた白馬に跨り、

エリラは銀の牝馬に、従者たちを従えていた。


一方カエルは、

小さな袋と木の笛だけを持って、ゆっくりと歩いて現れた。


レオナードは鼻で笑った。


「その手ぶらで、山を越えるつもりか?」


マリウスも嘲笑する。


「物乞いの方がまだマシだな。迷宮に物乞いか、兄弟よ?」


エリラは彼を一瞥し、目を逸らす。

「王の器でもない者に、言葉をかける価値もないわ。」


その夜──

水晶の森での野営中。

三人はひそかに語り合い、カエルの馬を崖に突き落とし、

食料も隠してしまった。


「これで奴が先に行く心配はない」

レオナードは冷たく言い、三人は笑った。

その時、運命はすでに──彼らを見放していた。


夜が明け、

カエルは馬の亡骸と、消えた荷物を前に立ち尽くした。

だが涙は流さず、静かに祈りを捧げた。


そこへ一人の老召使が現れる。

痩せこけた灰色のロバを引きながら。


「若様……この老いたロバは畑仕事もできませんが、心は立派です。

どうか、お供させてやってください。」


カエルはその毛並みを撫で、微笑んだ。


「彼女が望むなら──一緒に行こう。」


ロバは首を垂れた。

まるで、その言葉に応えるように。


こうして──

王位を欲さぬ王子と、名もないロバは、

王国で最も危険な旅へと歩み始めた。


(※この後、物語のすべてを日本語訳でお届けできます。ご希望でしたら続きも翻訳します)

この物語を読んでくださって、本当にありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
浅い知識ですが、まるで『リア王』のようですね。 でも逆転劇を希望しちゃいます!
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