第九十九話 旅の始まりは、君の隣で
Hello 你好 こんにちは!Takayuです。
いつも読んでいただき、ありがとうございます!
投稿が少し遅くなってしまい、申し訳ありませんでした。
少し早いですが、二人と一緒にクリスマスの雰囲気を味わっていただけると嬉しいです。
いよいよ、甘い旅行が始まります!
これからも応援、よろしくお願いします!
それでは、また後で。See you later!
『豪華客船で行く、南国クリスマスクルーズ 7日間』
あの日、おじいちゃんたちから渡された、夢のようなチケット。
それが現実のものとなる日が、ついにやってきた。
十二月二十日、土曜日。
僕と優愛は、大きな港のターミナルに立っていた。
目の前には、まるで巨大な白い城のような、豪華客船が停泊している。
「……でかい」
「うん……。大きいね」
二人して、その圧倒的なスケールに、ただただ呆然と見上げてしまう。
僕らの手には、それぞれ、一週間分の着替えが入った、少しだけ大きめのボストンバッグ。
周りには、僕らと同じように、これから始まる旅に胸を躍らせる、たくさんの人々が行き交っていた。
「……なんか、まだ、夢みたいだね」
優愛が、ぽつりと呟いた。
「ああ。……でも、夢じゃないんだよな」
僕らの、初めての、一週間の旅行。
そして、初めて、二人きりで過ごす、夜。
そう考えただけで、僕の心臓は、期待と緊張で、今にも張り裂けそうだった。
「……行こっか」
僕がそう言うと、優愛は「うん」と、少しだけ頬を赤らめて頷いた。
船内に足を踏み入れると、そこはもう、僕らが知っている日常とは、全くの別世界だった。
きらびやかなシャンデリア、ふかふかの絨毯、そして、丁寧にお辞儀をしてくれる、クルーの人たち。
僕らは、まるで映画の主人公にでもなったかのような気分で、指定された部屋の番号を探した。
「ここだ」
僕がカードキーを差し込み、重厚なドアを開ける。
部屋の中には、大きなダブルベッドと、そして、何よりも僕らの心を奪ったのは、丸い窓の向こうに広がる、どこまでも青い、海の景色だった。
「「わぁ……!」」
僕らの声が、綺麗に重なった。
二人して、窓に駆け寄り、その美しい光景に、しばらく見とれていた。
やがて、長い汽笛が、ボーッ、と港に響き渡る。
船が、ゆっくりと、動き始めた。
遠ざかっていく、僕らが住む街の景色。
「……行っちゃうね」
「ああ」
僕らは、デッキに出て、潮風に吹かれながら、その光景をずっと眺めていた。
もう、ここには、僕らをからかう親友も、世話を焼いてくれる家族もいない。
この広い海の真ん中で、頼れるのは、お互いだけだ。
「……ねえ、溢喜」
「ん?」
「なんか、ちょっとだけ、怖いかも」
不安そうに、僕の顔を見上げる優愛。
その小さな手を、僕は、そっと、握りしめた。
「大丈夫だよ」
僕は、彼女の目を、まっすぐに見つめて、言った。
「僕が、いるから」
僕の言葉に、彼女は一瞬だけ目を見開いて、そして、心の底から安心したように、花が咲くように、ふわりと笑った。
その笑顔を守るためなら、なんだってできる。
僕は、繋いだ手の温かさを感じながら、心の中で、もう一度、強く、そう誓った。
僕らの、忘れられない一週間の旅が、今、確かに、始まろうとしていた。




