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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第六章 僕の彼女
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第九十八話 僕らの、大成功

『Starlight gift from Koudou group』


僕らが名付けたクリスマスギフトセットは、十一月の最終週、ライトウェイとシャイン、両社の店舗で、一斉に販売が開始された。


「……本当に、売れるかな」

発売初日。

僕と優愛は、変装のつもりで、少しだけ大きなマスクをして、駅前のショッピングモールにある、ライトウェイの店舗を、遠巻きに眺めていた。

一番目立つ入り口の特設コーナーに、僕らの商品が、山のように積まれている。


「大丈夫だよ。幸葵ちゃんのデザインは最高だし、美褒たちが配ってくれたチラシの効果も、絶対にあるはずだから」

優愛は、自信ありげにそう言うけれど、その声は、ほんの少しだけ、震えていた。


僕らが固唾を飲んで見守っていると、一人の若い女性が、僕らの商品の前で足を止めた。

「わ、これ、可愛い……!」

手に取って、キラキラした目で眺めている。そして、迷うことなく、一つ、買い物カゴに入れた。


「「……!」」

僕と優愛は、顔を見合わせたまま、声にならない声で、小さくガッツポーズをした。

最初の一人が、買ってくれた。

僕らが創り上げたものが、誰かの「欲しい」に、なったんだ。


その日を皮切りに、僕らのギフトセットは、信じられないような勢いで売れ始めた。

『SNSで話題! Koudoグループの高校生が企画したクリスマスギフトが、エモすぎると大人気!』

ネットニュースのトップに、僕らが撮った、あのキャンドルの写真が掲載された時には、さすがに心臓が止まるかと思った。


そして、十二月に入った、最初の週末。

光道本邸の書斎に、僕らは集まっていた。

僕と優愛、そして、光道四兄弟。


「――以上が、十一月末時点での、プロジェクトの販売報告となります」

優愛が、凛とした声で、最後のページをめくる。

プロジェクターで壁に映し出されたグラフは、どれも、信じられないくらい、綺麗な右肩上がりを描いていた。


「……発売からわずか一週間で、目標売上の**70%**を達成。このペースでいけば、クリスマスまでには、目標を大幅に超える見込みです。……以上です」


シーン、と静まり返った書斎。

四兄弟は、誰一人、何も言わない。ただ、腕を組んで、目の前の数字を、睨みつけている。


(……や、やりすぎた、か……?)

僕の背中を、冷たい汗が伝う。


その、重い沈黙を破ったのは、優誓おじいちゃんの、腹の底からの、豪快な笑い声だった。


「「「「はっ、はっ、はっ、はっ、は!」」」」


一人、二人、三人、四人。

四兄弟全員が、涙を流しながら、腹を抱えて、笑っていた。


「……参った」

ようやく笑い終えた真実おじいちゃんが、メガネを拭きながら、言った。

「完全に、参りました。……まさか、高校生の君たちに、ここまでやられるとは」


「素晴らしい!」

栄誉おじいちゃんが、手を叩く。

「この『二つの会社のファンを共有する』という発想! そして、SNSを使ったマーケティング戦略! どれも、我々にはなかった視点だ!」


「ああ、そして何より……」

爽快おじいちゃんが、僕と優愛の顔を、順番に見て、言った。

「何より、君たちが、心の底から、楽しんでこれをやっていたこと。それが、商品を通して、お客様にも伝わったんだろう。……最高の、プレゼンテーションだったよ」


最高の、賛辞。

僕と優愛は、顔を見合わせたまま、ただ、胸が熱くなるのを感じていた。


「――よくやった、溢喜、優愛」

最後に、優誓おじいちゃんが、僕らの肩を、力強く、叩いた。

「君たちは、見事に、我々をあっと言わせてくれた。……約束通り、褒美をやろう」


そう言って、彼が差し出したのは、二枚の、豪華なチケットだった。

そこに書かれていた文字に、僕と優愛は、息を呑んだ。


『豪華客船で行く、南国クリスマスクルーズ 7日間 ペアチケット 12/20~12/26』

「……え」

「プロジェクトの成功祝いだ。期末テストも終わった後だろう。二人で、ゆっくりと、羽を伸ばしてくるといい」


僕らの、未来への、挑戦。

その、最初のプロジェクトは、僕らの想像を、何倍も、何十倍も超える、最高の形で、成功への道を歩み始めた。

そして、僕らの手の中には、一週間という、とてつもなく長くて、そして甘い、未来への「約束」が、確かに、握られていた。

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