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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第六章 僕の彼女
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第九十七話 僕らが作った、最初の光

ブレスレットに誓いを立てた、あの週末から一週間。

僕らの日常は、期待と、少しの焦りに満ちていた。

クリスマス商戦まで、もう時間がない。

僕と優愛は、放課後になると毎日、書斎(僕らのオフィス)に駆け込み、夜遅くまで、プロジェクトの最終準備に追われていた。


「――パッケージの最終デザイン、これでFIXします!」

「各店舗への配送ルート、確認取れました!」


パソコンの画面越しに、ライトウェイとシャインの社員さんたちが、次々と報告を上げてくれる。

最初はどこか「高校生のお遊び」だと、高を括っていた彼らの目も、今はもう、僕らを対等な「プロジェクトリーダー」として見る、真剣なものに変わっていた。

それが、誇らしくて、少しだけ、身が引き締まる思いだった。


そして、運命の金曜日。

「――お待たせいたしました。試作品第一号が、ただ今、こちらに到着いたしました」

オンライン会議の向こう側で、担当者の人が、深々と頭を下げた。


僕と優愛は、息を呑んで顔を見合わせる。

数分後。書斎のドアが、コンコン、とノックされた。

入ってきたお手伝いさんが、銀色のトレイに乗せて運んできたのは、二つの、見覚えのあるデザインの箱だった。


「……」

「……」


幸葵さんが描いてくれた、星空のデザイン。

中央には、金色の箔押しで、『Starlight gift from Koudou group』という、僕らが考えたブランド名が、誇らしげに輝いている。

震える手で、僕と優愛は、同時に、箱を開けた。


中に入っていたのは、僕らの、そして、はとこたちの、たくさんの想いが詰まった、二つの商品。

一つは、ライトウェイ製の、星の形をしたアロマキャンドル。

もう一つは、シャイン製の、小さな三日月のモチーフがついた、シルバーネックレス。


「「……すごい」」


僕らの声が、綺麗に重なった。

想像していたよりも、ずっと、ずっと、素敵だ。

僕らのアイデアが、本当に、形になったんだ。


「……なあ、優愛」

「うん」

「火、つけてみないか? キャンドル」

「……うん!」


僕らは、書斎の明かりを少しだけ落とし、窓際のテーブルに、キャンドルを置いた。

僕がライターで火を灯すと、小さな炎が、ゆらり、と揺れる。

そして、部屋の中に、ふわりと、甘くて、少しだけスパイシーな、冬の夜を思わせる香りが、広がり始めた。


窓の外は、もうすっかり暗くなっている。

キャンドルの、小さな、でも確かな光が、僕と優愛の顔を、優しく照らし出していた。

僕らは、どちらも何も言わずに、ただ、その光を、じっと見つめていた。


「……綺麗だね」

優愛が、ぽつりと呟いた。

「ああ」


僕らが、初めて、二人で、ゼロから創り上げた、最初の光。

それは、本当に、本当に、綺麗だった。


「……ねえ、溢喜」

「ん?」

「ありがとう」

「え?」


「私、最初は、少しだけ怖かったんだ。おじいちゃんたちに『やってみろ』って言われた時。こんな大きなプロジェクト、私たちだけで、本当に成功させられるのかなって」

優愛は、キャンドルの炎を見つめながら、静かに、語り始めた。


「でも、今は、もう怖くない。溢喜が、隣にいてくれるから。こうやって、一緒に、光を灯してくれるから」


その言葉に、僕は、何も言えなかった。

そうだ。

彼女の不安は、「跡継ぎ」という重圧ではない。

僕と同じ、「このプロジェクトを、成功させられるだろうか」という、リーダーとしての、純粋なプレッシャーだったんだ。

そして、それを乗り越えられたのは、僕が隣にいたからだと、彼女は言ってくれている。


僕は、テーブルの下で、そっと、彼女の冷たくなった手を、握った。

彼女も、優しく、その手を握り返してくれる。


僕らが灯した、小さな光。

それは、いつか、二つの会社を、そして、もっとたくさんの人を照らす、大きな光になるかもしれない。

そんな、確かな予感が、僕の胸を熱くしていた。


僕らの、未来へと続く道は、もう、暗闇なんかじゃない。

この光が、確かに、照らし出してくれているのだから。

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