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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第六章 僕の彼女
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第九十二話 僕らが描く、未来の地図

「――最高の証明になるんじゃないかな……!」


興奮したように僕の両手をぎゅっと握りしめ、目をキラキラと輝かせている優愛。

その熱に浮かされたように、僕の胸も、熱く、高鳴っていた。


(……僕が、そんな、大それたことを……)


正直、僕が口にしたのは、本当に、ただの素朴な疑問だった。

でも、優愛の言葉によって、その何気ない一言が、とてつもなく壮大で、意味のある目標へと変わっていく。


「……できるかな、僕らに」

弱気な僕の呟きに、優愛は、握った僕の手に、さらに力を込めた。

「できるよ。……ううん、やるの。二人で」

その瞳には、もう何の迷いもなかった。

そうだ。僕らはもう、一人じゃない。最高のパートナーなんだ。


「……ああ。やろう」

僕が力強く頷くと、彼女は「うん!」と、最高の笑顔を見せた。


その日の帰り道。

僕らの足取りは、来た時とは比べ物にならないくらい、軽やかだった。

今まで、どこか「受け身」で考えていた、光道家の未来。

それを、初めて、僕たちが「創り上げていく」ものなのだと、実感できたからだ。


「でも、どうやって?」

家の近くの角を曲がりながら、僕が現実的な問題を口にする。

「四人のおじいちゃんたち、みんなそれぞれの会社の社長で、プライドもあるだろうし。いきなり『会社を一つにしましょう』なんて言っても、聞いてくれるかな」


「……そうだよね」

優愛も、少しだけ、表情を曇らせる。

「まずは、もっと勉強しないと。会社のことも、経営のことも。一つにまとめることの、メリットとデメリット、ちゃんと説明できないと、きっと、聞いてもらえない」


「だよな……」

結局、僕らは、目の前のテスト勉強すらままならない、ただの高校生なんだ。

壮大な目標が見えたのはいいけれど、そこに至るまでの道は、果てしなく遠い。


「……でもさ」

僕が少しだけ落ち込んでいると、優愛が、何かを思いついたように、僕の顔を覗き込んできた。

「溢喜が言ってた、『似てるところ』。そこから、始めてみるのはどうかな?」

「え?」


「例えば、雑貨。ライトウェイ(優誓おじいちゃん)も、シャイン(真実おじいちゃん)も、それぞれの会社で扱ってるでしょ?」

「ああ」

「だったら、まず、その雑貨部門だけ、協力してみるとか。共同で新しい商品を開発するとか、仕入れルートを一つにまとめるとか」


優愛の目が、またキラキラと輝き始める。


「いきなり全部を一つにするのは無理でも、小さな『成功体験』を積み重ねていけば……。いつか、おじいちゃんたちも、分かってくれるかもしれない。『ああ、あいつらが言ってたのは、こういうことだったのか』って」


その、あまりにも賢くて、前向きなアイデアに、僕はもう、感心するしかなかった。

すごいな、優愛は。

僕がただ漠然と大きな夢を語るだけなのに対して、彼女は、そこに至るまでの、具体的で、現実的な「最初の一歩」を、もう見つけ出している。


「……敵わないな、本当に」

僕がぽつりとそう言うと、彼女は「え、何が?」と、不思議そうに首を傾げた。

「ううん、なんでもない。……やろうぜ、それ。まずは、雑貨からだ」


僕の言葉に、彼女は「うん!」と、力強く頷いた。


家の前に着き、僕らは名残惜しそうに、手を離す。

「じゃあ、また明日な、委員長」

「うん。また明日、副委員長」

僕らは、どちらからともなく、そう呼び合った。

それは、涼風祭の時だけの、特別な呼び名だったはずなのに。

今、僕らの間では、新しい意味を持ち始めていた。


僕らの、未来へと続く道。

その、広大な地図の、最初の目的地が、確かに、記された瞬間だった。

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