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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第六章 僕の彼女
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第八十四話 甘い余韻と、いつもの日常

プラネタリウムの星空。その時に囁いた「好き」という言葉。

色々なことがありすぎた日曜日の余韻は、月曜日の朝になっても、僕の胸を甘く満たしていた。


「……おはよう、溢喜」

「おはよ、優愛」


玄関のドアを開けると、いつもと同じタイミングで、隣の家のドアから優愛が出てくる。

何も変わらない、いつもの朝の光景。

けれど、僕らの間には、昨日までとは決定的に違う、甘くて少し気恥ずかしい空気が流れていた。

隣に並んで歩き出す。

これまでは何も考えずに出ていた言葉が、今は喉の奥でつかえてしまう。


「……あのさ、昨日は、その……」

「うん」


僕が口ごもると、優愛が僕の顔をちらりと見上げて、小さく笑った。

その笑顔に、昨日の出来事が一気に蘇り、僕の顔に熱が集まる。


「……楽しかった。ありがとな、優愛が考えてくれたプラン」

「ううん。私も、楽しかったから」


それだけの会話なのに、心臓が心地よく跳ねる。

恋人になるって、こういうことなのか。


教室に入ると、真っ先に僕らの変化に気づいたのは、やはり希望だった。

「おやおやー? 週末に何があったんですかねえ、お二人さん? なんか空気が甘ったるいんですけど?」

「うるさいな、お前には関係ないだろ」

「まあまあ、そう邪険にすんなって。で? 週末の修行の成果は、どうだったんだよ?」


希望のからかいに、僕と優愛は同時に顔を赤らめる。

その反応を見て、隣にいた美褒が「もう、希望ったら」と呆れながらも、嬉しそうに微笑んだ。


「よかったね、溢喜、ゆーちゃん。二人とも、すごく幸せそう」


その優しい言葉に、僕らは救われた気持ちになる。

面倒見のいい幼馴染は、僕の彼女になった。

そして、その事実は、僕らの日常を、今までで一番、輝かせてくれている。


昼休み、いつものように四人で机をくっつけて弁当を広げる。

「それでさ、次のテスト期間も、また溢喜の家で勉強会するんでしょ?」

美褒の何気ない一言に、僕と優愛は同時にむせた。

「げほっ!?」

「ぶっ!?」


顔を見合わせ、二人して先々週の土曜の夜の出来事を思い出し、気まずさで俯く。

そんな僕らを、希望と美褒はニヤニヤしながら見ている。


「いいねえ、青春だねえ」

「本当に。見てるこっちが恥ずかしくなっちゃう」


僕らの恋人としての日々は、まだ始まったばかり。

家族の呪いが解けた今、もう僕らを縛るものは何もない。

これからは、一つ一つの当たり前だった日常が、きっと恋人としての非日常に変わっていく。


帰り道、僕らはまた並んで歩く。

「なあ、優愛」

「ん?」

「……これからも、隣、歩いてくれるか?」


僕の言葉に、優愛は一瞬足を止め、驚いたように僕を見た。

そして、次の瞬間、これまでで一番美しい顔で、花が咲くように笑った。


「当たり前でしょ? 私が隣にいるんだから、もう道に迷ったりしないでよね」


それは、いつもの面倒見のいい幼馴染の言葉。

でも、その手は、いつの間にか僕の手をそっと握りしめていた。

繋がれた手の温かさが、僕らの未来を照らしてくれる。

そんな確信に満ちた、幸せな放課後だった。

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