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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第六章 僕の彼女
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第八十二話 君が選ぶ、僕の未来

約束の日曜日は、またしても、僕らの気持ちを映したかのような快晴だった。

待ち合わせ場所の駅前。

僕が少しだけそわそわしながら待っていると、見慣れた、でもやっぱり特別な私服姿の優愛が、駆け寄ってきた。


「おはよう、溢喜! ごめん、待った?」

「おはよ。ううん、僕も今来たとこ」

今日の彼女の手には、いつものバッグの他に、一冊の可愛らしいノートが握られている。

あれが、僕を最高にエスコートするための、虎の巻か。

そう思うだけで、口元が緩んでしまう。


「じゃあ、プラン通り、まずはショッピングモールに行きます! 副委員長、こちらへどうぞ!」

「はいはい、委員長さん」

わざとらしく僕をエスコートするように腕を差し出す優愛に、僕は笑いながらついていく。

僕らの、二度目の特別な一日が始まった。


ショッピングモールに着くと、優愛は僕の手をぐい、と引いて、真っ直ぐにメンズ服のフロアへと向かった。


「えっと、まずは、溢喜に似合いそうな秋服を探します!」

「いや、別に、服は足りてるって」

「だめ。いつも私の買い物に付き合ってくれてるんだから、今日くらい、私が溢喜をかっこよくするの」


そう言って、彼女は真剣な顔で、お店の服を物色し始めた。

ハンガーにかかったシャツを僕の胸に当てては、「うーん、色が違うかな」と首を傾げたり、「溢喜は、どっちのパーカーが好き?」と僕の意見を聞いてくれたり。

その姿は、まるで僕の専属スタイリストのようで、なんだか気恥ずかしい。


「……これ、ちょっと着てみて」

優愛が持ってきたのは、僕一人では絶対に選ばないような、少し大人びたデザインのネイビーのニットだった。

「え、これ、俺に似合うか?」

「いいから、早く!」


半信半疑で試着室に入り、ニットに袖を通す。

鏡に映った自分は、なんだかいつもより、少しだけ大人に見えた。


「……どうだ?」

僕がカーテンを開けると、待っていた優愛が、一瞬、息を呑んだように目を見開いた。

そして、次の瞬間、みるみるうちに頬を赤く染めて、小さな声で、こう言った。


「……すごく、いい。かっこいい……」


その、あまりにも素直な反応に、今度は僕の顔が熱くなる。

「そ、そうか? じゃあ、まあ……買うか」

「うん。絶対に、買った方がいい」


結局、僕はその日、優愛に選んでもらった服を、そのまま着て帰ることになった。

店を出て、鏡張りの柱に映った僕らの姿を見る。

いつもより、ほんの少しだけ、お似合いの二人になれているような気がして、胸の奥がくすぐったかった。


昼食は、プラン通り、ハンバーガーの美味しいと評判のカフェへ。

大きなハンバーガーに、二人でかぶりつく。

「美味しいね!」

「ああ、うまいな」

他愛ない会話が、今は何よりも楽しい。


そして、午後は、プラネタリウムへ。

ドーム型の天井に、満点の星空が映し出された瞬間、僕も優愛も、思わず「わぁ……」と感嘆の声を漏らした。

穏やかなナレーションを聞きながら、僕らは静かに、星の海を眺めていた。


隣に座る優愛の、規則正しい寝息が聞こえてきたのは、それから間もなくのことだった。

(……おいおい、エスコートする側が、寝るなよ)

心の中でツッコミを入れつつも、その無防備な寝顔が、たまらなく愛おしい。

きっと、僕のためにプランを考えるのに、夜更かしでもしたんだろう。


僕は、そっと、自分の右肩を、彼女の頭がもたれやすいように、少しだけ傾けた。

こてん、と、小さな重みが、僕の肩にかかる。

甘いシャンプーの香りと、穏やかな寝息。


「……暗いところで、二人きりになれるし」


昨日の、彼女の言葉が蘇る。

(……本当に、寝てるのか?)

いたずら心が湧いてきて、僕は、彼女にしか聞こえないような、本当に小さな声で、囁いた。


「……好きだよ、優愛」


その瞬間。

僕の肩に預けられていた彼女の頭が、ほんの少しだけ、ぴくり、と動いたような気がした。

気のせいか、それとも――。

答えは、星空の向こう側。

僕と優愛の、最高に甘い一日は、まだ、終わりそうになかった。

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