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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第六章 僕の彼女
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第八十一話 君が計画する、特別な一日

「絶対に、楽しませてみせるからね!」


昼休みに優愛が宣言した、その言葉の通り。

その日から、彼女は僕を「最高にエスコートする」ためのプラン作りに、夢中になっているようだった。


授業中、ふと隣を見ると、真剣な顔で黒板を見つめている……と、思いきや。

教科書の影に隠した小さなメモ帳に、時々何かをすごい勢いで書き込んでは、また真剣な顔に戻るのを、僕は見逃さなかった。

(……おいおい、委員長さん。授業はちゃんと聞かないと)

心の中でツッコミを入れつつも、僕のために一生懸命になってくれているその姿が、たまらなく愛おしい。


「なあ、溢喜」

昼休み、希望が僕の席にやってきて、小声で言った。

「優愛のやつ、なんか最近ずっとスマホ見ながら、メモ帳に何か書き込んでるけど。大丈夫なのか?」

「ああ、多分、大丈夫だ」

僕がニヤニヤしながらそう言うと、隣にいた美褒が、全てを察したようにくすりと笑った。

「そっか。ゆーちゃん、今度の『お出かけ』の計画、立ててくれてるんだね。溢喜に勝負で負けたの、結構悔しかったみたいだから」


やっぱり、そうだったのか。

あの後、美褒にだけは、こっそり勝負のことを話していたらしい。

負けた悔しさも、僕を楽しませるためのエネルギーに変えてくれる。本当に、敵わないな、と思う。


そして、金曜日の放課後。

「溢喜!」

帰り支度をしていた僕を、優愛が呼び止めた。

その手には、一冊の可愛らしいノートが握られている。


「日曜日のプラン、できたよ」

そう言って、彼女は少しだけ得意げに、でもどこか緊張した面持ちで、ノートを開いて見せてくれた。

そこには、彼女の綺麗な文字で、完璧なタイムスケジュールと、お店の地図、そして手描きの可愛らしいイラストまでが、びっしりと書き込まれていた。


『溢喜を最高にエスコートするプラン!』


その、あまりにもストレートなタイトルに、僕は思わず吹き出しそうになるのを必死でこらえた。


「……すごいな、これ」

「でしょ? ちゃんと、溢喜が好きそうなところ、リサーチしたんだから」


プランは、こうだった。

午前中は、駅前のショッピングモールで、男物の服を見て回る。

『いつも私の買い物に付き合ってくれてるから、たまには溢喜の服を、私が選びたい』

とのことらしい。


昼食は、最近できた、ハンバーガーの美味しいと評判のカフェ。

そして、午後は……。


「……プラネタリウム?」

僕が意外な単語に目を丸くすると、優愛は少しだけ顔を赤らめて、早口で言った。

「だ、だって、溢喜、星とか好きでしょ? 昔、よく図鑑とか見てたじゃない」

「……よく、覚えてるな」

「当たり前だよ。……それに」


優愛は、ほんの少しだけ声を潜めて、続けた。

「……暗いところで、二人きりになれるし」


その、あまりにも不意打ちで、あまりにも大胆な一言に、今度は僕の心臓が爆発しそうになった。

「なっ……!」


僕がわたわたしていると、彼女は「なーんてね!」と、舌をぺろりと出して笑った。

完全に、遊ばれている。

勝負には勝ったはずなのに、なんだか、やっぱり僕の方が、彼女の手のひらの上で転がされているような気がした。


「……楽しみにしてる。優愛のエスコート」

僕がそう言うと、彼女は「うん!」と、最高の笑顔で頷いた。

その笑顔を見て、僕はもう、日曜日が待ち遠しくて、たまらなかった。

僕が計画した一日とは、また違う。

彼女が、僕のためだけに考えてくれた、特別な一日。

それはきっと、今までで一番、甘くて、幸せな一日になる。

そんな予感が、僕の胸をいっぱいにしていた。

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