第六話 荷物持ちでもいいから
「そうか〜。ついに優愛様の魅力に気付いてしまったか〜」
ボイスチャットで希望が言う。
僕はもう何がなんだか分からなくなって、希望に今日起きたこと全部を話した。
一緒に買い物に行って、荷物持ちをさせられ、でも最後にあの言葉をかけられ…。
考えるだけで心臓の鼓動が大きく、そして速くなる。
「今まで幼馴染だとしか思ってなかったから、今日急に言われても…。」
「溢喜、その気持ちはな、急に言われてうまれるものではない。いいか、自分も優愛様のことが好きなんだと認めるんだ。」
希望がはっきり言う。
そうか、そうだったんだ。
僕は優愛のことが、好きだったんだ。
でも、優愛からそう言うってことは、もしかして…優愛も僕のことが…。
「まあ、恋のお悩みはこの俺様…」
「いや、君にそんな難しいことは無理だね」
希望の言葉を遮って、僕が話す。
でも、頭の中は優愛でいっぱいだ。
そう考えている中、希望が一言。
「なら、美褒に相談するといいぞ。お前が優愛様の次に信頼できる女子だし」
確かにそうだ。しかも、女子にしかわからない複雑な気持ちとかも聞くことができる。
「そうか、分かった。ありがとう。明日話してみるよ」
…と言ったものの、今すぐにでも話したい。
これが“恋”っていうやつなんだと実感した。
すると、希望が言った。
「今、美褒にメッセージ送ったけど、即既読ついたし、返信まで来たよ」
「え?」
僕は一瞬驚きながら、聞いた。
「なんてメッセージ送ったの?」
「俺の友達が恋のお悩み相談室開いてほしいらしい」
誰が恋のお悩み相談室を開いてほしい、だ。
僕は今の気持ちを聞いてほしいだけなんだ。
「ちなみに、返信は?」
「“あんたに相談したやつ、バカだなw”だって」
そうですね。僕はバカですね。
すいませんでしたね〜。
「美褒、今暇だと思うから、ボイチャしてきなよ」
「OK!ありがと!」
そう言って、希望との通話を切ると、すぐに美褒に電話をかけた。
「お前だったか〜。バカは〜」
その声は紛れもなく美褒だった。だけど、いつものおっとりとした感じとは全く逆の性格になっていた。
「え、なんかキャラ違くない?」
「夜になると私、ちょっとスイッチ入るんだよね〜」
「こわ…」
「で?何があったの?優愛ちゃんに何されたの?」
「いや、されたっていうか…言われたんだよ。“ドキッとする時あるし”って」
「……それ、告白じゃん!ほぼ告白じゃん!」
「いやいやいや、そんなわけ…」
「あるって。てか、溢喜、優愛ちゃんのこと好きなんでしょ?」
「……うん。たぶん、いや、もう…間違いなく」
「じゃあ、誘っちゃえば?」
「何に?」
「デート。誘ってみなよ。自然な流れでさ。買い物の続きでもいいし、映画でも食事でも」
「いやいやいや、そんな急に…」
「急じゃないよ。むしろ遅いくらい。優愛ちゃん、待ってると思うよ?」
「……そうかな」
「そうだよ。てか、あのシャーペン、めっちゃ可愛かったし。あれ選んだの、お前でしょ?」
「うん。優愛に似合うと思って。…てか、何で知ってるの?」
「優愛からさ、写真付きで送られてきたのよ。『溢喜くんが、わざわざ私のために買ってくれたの!』みたいなこと、言ってたぞ」
絶対に溢喜“くん”とは言っていない…。
続けて美褒が言う。
「じゃあ、そのセンスを活かして、次は“デートコース”選びな」
「……美褒って、恋愛経験豊富なの?」
「それは企業秘密。でも、バカな男子の背中を押すくらいはできる」
「……ありがとう」
通話を切ったあと、僕はスマホを見つめた。優愛の名前が、メッセージ欄の一番上にある。
指が、ほんの少しだけ震えた。
“今度、また一緒に出かけない?今日みたいに、荷物持ちでもいいから。”
そう打って、送信ボタンを押した。