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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第四章 僕らが照らす道
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第四十七話 作戦開始

『私たちが、次にすべきこと』


電話越しに交わした優愛の決意は、僕自身の決意でもあった。

週が明けても、僕たちの心はその一つの目標に向かって固く結ばれていた。


昼休み、いつものように四人で集まっても、僕と優愛の間に流れる空気は、先週までとは明らかに違っていた。

ただの甘い雰囲気ではない。

共通の秘密と、大きな目的を共有する「共犯者」のような、真剣な連帯感。


「で、どうするんだ? おじい様たち、相当頑固だろ」

事情をすべて打ち明けられた希望が、心配そうに言う。

「うん……。私とおじいちゃん、溢喜と真実おじいちゃん、っていう一対一じゃ、また意地を張って終わりかもしれない」

優愛が、腕を組んで唸る。


その時、静かに話を聞いていた美褒が、ぽつりと呟いた。

「……四人、揃ってないと、ダメなのかな」

「え?」

「優誓おじいちゃんも、真実おじいちゃんも、きっと本当は謝りたいんだと思う。でも、今さら二人きりで向き合うのは、プライドが邪魔するんじゃないかな。だから……他の二人、うちのおじいちゃん(爽快さん)と、栄誉おじいちゃんがいたら、少しは違うかも」


その言葉に、僕と優愛ははっとした。

そうだ。

僕らは、一番肝心なことを見落としていた。

あの悲劇は、四人全員の過去なんだ。


「……美褒、お願いがある」

僕が言うと、彼女は「うん」と力強く頷いた。

「分かってる。私から、おじいちゃんに話してみる。きっと、分かってくれるはずだから」


その日の放課後。

僕のスマホが、美褒からのメッセージで震えた。

『おじいちゃんと話した。全部聞いてくれて、「分かった」って。栄誉おじいちゃんにも、こっちから連絡してくれるって』


短い文面だったが、その向こう側にある美褒の頑張りと、爽快おじいちゃんの覚悟が伝わってきて、胸が熱くなった。

すぐに、優愛に電話をかける。

『美褒から連絡、来た?』

「ああ、今。うまくいったみたいだ」

『よかった……!』

電話の向こうで、優愛が心の底からほっとしたような声を出す。


だが、本当の戦いはここからだ。

僕らが待っていると、その夜、僕のスマホに見知らぬ番号から着信があった。

恐る恐る電話に出ると、聞こえてきたのは、穏やかで、でも芯の通った声だった。


『溢喜くんかい? 爽快だ』

「……! 爽快、おじいちゃん」

『話は美褒から聞いたよ。君たちの覚悟は、よく分かった。栄誉も、同じ気持ちだ』


その言葉に、僕はごくりと唾を飲み込んだ。

『我々も、もう何十年も、あの日のことから目を背けてきた。君たちが、動いてくれたおかげで、ようやく我々も腹を括ることができた。……ありがとう』

「いえ、そんな……」

『そこで、相談なんだが……』


爽快おじいちゃんは、静かに、でも確かな口調で、僕たちの計画の最後のピースを提示した。

『颯喜が亡くなったのは、来週の土曜日だ。命日だよ。その日に、あの川に、兄さん(優誓)と真実を連れて行きたい。だが、我々が誘っても、あの二人は絶対に首を縦に振らん』

「……」

『だから、頼む。溢喜くん、君から真実を誘ってくれ。そして、優愛くんには、兄さんを。孫である君たちからの、必死の頼みなら……あの二人も、断れんだろう』


電話を切った後、僕はしばらく動けなかった。

託された。

僕と優愛に。

この、何十年も止まったままの時間を、動かすための、最後の引き金を。


すぐに、優愛に電話をかける。

「……爽快おじいちゃんから、電話があった」

『……うん。私も、美褒から全部聞いた』

電話の向こうの優愛の声も、硬かった。


「……やれるか?」

『……やるしかないよ』


僕らは、どちらからともなく、同じ言葉を口にした。

『二人で、絶対に』


来週末、土曜日。

それが、僕たちの本当の挑戦の日になった。

僕らの夏は、まだ終わっていなかった。

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