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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第四章 僕らが照らす道
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第四十一話 書斎への扉

Hello 你好 こんにちは!Takayuです。


いつも読んでいただき、ありがとうございます。

僕のミスで、一時的に第四十二話を先に投稿してしまいました。

順番が前後してしまい、大変申し訳ありません。こちらが第四十一話となります。


それでは、また後で。See you later!

「光道本邸の書斎の鍵だ」


あの日、優誓おじいちゃんから渡された、ずしりと重い一本の鍵。

はとこ会から数日が経っても、僕はその鍵を机の引き出しの奥にしまったまま、どうすることもできずにいた。


(暇な時でいい、って言われたけど……)

一人であの、お城みたいな光道本邸に行く勇気なんて、僕にあるはずもない。

かといって、この鍵の重みを無視し続けるのも、おじいちゃんたちの信頼を裏切るようで気が引けた。

授業中も、休み時間も、僕はポケットの中の鍵の感触を確かめては、ため息をつくばかりだった。


「……また、ため息ついてる」


昼休み。

いつものように窓辺に立っていると、隣から優愛の呆れたような、でも少しだけ心配そうな声がした。

「なんか、悩み事?」

「え? あ、いや、別に……」

「嘘。はとこ会が終わってから、ずっとだよ。よかったら、聞くけど?」


その優しい言葉に、僕の中でずっと張り詰めていた何かが、ぷつりと切れた。

僕はポケットから例の鍵を取り出し、彼女の手のひらの上にそっと乗せた。


「……なに、これ?」

「光道本邸の、書斎の鍵。はとこ会の日に、優誓おじいちゃんにもらった」

優愛は、自分の祖父が僕にそんなものを渡していたことに、心底驚いたようだった。

僕が「一人じゃ、行く勇気がなくて」と正直に打ち明けると、彼女はしばらく黙って鍵を見つめていた。


そして、顔を上げて、僕の目をまっすぐに見て、言った。

「……じゃあ、私も一緒に行く」

「え、でも……」

「溢喜だけに任せるなんて、ずるいじゃない。私も、光道家の孫なんだから。それに……」

優愛は、ほんの少しだけ頬を染めて、言葉を続けた。

「溢喜が一人で悩んでるの、見るの嫌だもん。……パートナー、でしょ?」


その言葉が、どれだけ僕の心を救ってくれただろう。

僕らは顔を見合わせて、小さく笑った。

そうだ、もう僕は一人じゃないんだ。


そして、次の週末の土曜日。

僕たちは、光道本邸の巨大な門の前に立っていた。


「……やっぱり、でかいな」

「うん。私も、小さい時以来だから、ちょっと緊張する」


幸い、今日は四兄弟の誰もいないらしい。

家を管理しているお手伝いさんにだけ話を通してある、と優愛が言っていた。

二人きりで、静まり返った広い屋敷の廊下を歩く。

僕らの足音だけが、やけに大きく響いた。


「ここが、書斎」

優愛が指差した、重厚な扉。

僕はゴクリと唾を飲み込み、震える手で鍵穴に鍵を差し込んだ。

カチャリ、と重い金属音がして、扉がゆっくりと開く。


中に足を踏み入れた瞬間、古い紙と革の匂いが僕らを包んだ。

壁一面に、天井まで届くほどの本棚。

中央には、大きなマホガニーの机。

そこは、まさに光道家の歴史そのものが凝縮されたような空間だった。


「……すごい」

僕も優愛も、ただ圧倒されて立ち尽くす。


「何から見ればいいんだろうな」

僕が言うと、優愛は机の上に置かれていた、一冊の古びた革張りの日記を指差した。

「……あれ、もしかして、ひいおじいちゃんのじゃないかな」


二人で日記を手に取り、机の前の椅子に並んで腰掛ける。

震える指で最初のページをめくった、その時だった。


日記の間に挟まっていた、一枚の古い写真が、はらりと床に落ちた。

僕がそれを拾い上げて、二人で覗き込む。


そこに写っていたのは、まだ若々しい頃の、光道四兄弟だった。

でも、その隣に、もう一人。

僕らが知らない、五人目の少年が、少しだけはにかむように笑っていた。


「……誰、この人?」

優愛の呟きが、静かな書斎に響く。

僕の胸の中に、今まで感じたことのない、大きな謎と、そしてほんの少しの不安が、ゆっくりと広がっていくのを感じた。

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