↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第三章 ふたりの特別な時間
26/369

第二十六話 楽しかったはとこ会のあとで

流満を見つけた僕たちは、モールの出口付近で再び集まった。

ぬいぐるみを抱えた流満は、まるで宝物を手に入れた子どものように満足げな顔をしている。


「それ、家に持って帰るの?」

和満が呆れたように眉をひそめると、優愛が「まあまあ、記念だし」と笑って肩をすくめた。


「じゃあ、ここで解散かな」

幸葵がそう言うと、自然とみんながそれぞれの方向へ動き出す。


「また連絡するねー!」

「次はもっと近いとこがいいな〜」

「写真ありがと!」


別れ際の声があちこちで飛び交う中、僕は優愛と美褒と並んで駅へと向かった。

広い駐車場に出ると、夕焼けはすっかり夜に変わり、ぽつぽつと街灯が灯っていた。

オレンジ色の明かりが、優愛と美褒の横顔をやわらかく浮かび上がらせる。

見渡せば、駐車場の向こうには昼間と同じように田んぼが広がっている。

けれど今は真っ暗で、かすかに高速道路を走る車のライトだけが遠くに見えた。


「……楽しかったね」

優愛がぽつりとつぶやく。

「うん。なんだかんだ言って、悪くなかった」

僕が返すと、優愛は「でしょ?」とでも言いたげに小さく笑った。

「私は足、ちょっと疲れたかも」

美褒が苦笑いしながらつぶやくと、僕らは自然と歩幅を合わせて、彼女のペースに寄り添った。


やがて電車が来て、三人で同じ車両に乗り込む。

窓に映る夜景を眺めながら、互いに言葉少なに座っていた。

沈黙は気まずいものではなく、今日を振り返るために必要な静けさのようだった。


駅に着くと、僕と優愛と美褒は同じ改札を抜けた。

「じゃあ、私はここで」

美褒はバス停の方へと歩き出し、手を振って去っていった。


残ったのは、僕と優愛。

「家まで送っていくよ」

自然に口をついて出たその言葉に、優愛は一瞬驚いたように目を瞬かせたが、すぐに「……ありがと」と小さく微笑んだ。


住宅街の道を並んで歩く。

街灯の光が二人の影を長く伸ばし、まるで子どものころに一緒に帰った放課後の記憶を呼び起こすようだった。


「なんか、昔みたいだね」

優愛がふいに言った。


「昔?」

「ほら、小学校のとき。帰りが暗くなると、よく一緒に歩いたでしょ。あのときも、溢喜が“危ないから送る”って言ってた」


「……覚えてるよ」

少し照れながら答える。

思い返せば、あの頃もこうして横に並んで歩いていた。

変わったのは背の高さと、互いの言葉の選び方くらいだろう。


家の角に差しかかると、優愛が足を止めた。

「ここで大丈夫。ありがとね」

その声は、どこか柔らかくて、心地よい。


「いや、別に……当然だから」

僕は少しだけ視線をそらした。


優愛は軽く手を振り、「じゃあ、また」と言って家の方へ歩いていく。

振り返りざま、小さく笑ったその仕草が、今日一日の締めくくりのように感じられた。


家に帰ると、部屋の空気がひやりと冷たく感じた。

モールの喧騒や、はとこたちの笑い声は、もう遠い。


スマホを充電器に差し込むと、画面に通知が届いた。

差出人は希望だった。


“今、話せる?”


僕は「OK」とだけ返して、ボイスチャットを繋いだ。


「お疲れ〜。どうだった?はとこ会」

軽やかな声がイヤホン越しに響く。


「……思ったより、楽しかった」


「おお、珍しくポジティブじゃん。何かあった?」

「いや、別に……ただ、優愛がさ」

「ほう?」

「“ガチで”って言葉、やめたことに気づいてて。それができたってことは、できるってことだって」


希望はしばらく黙っていた。

その沈黙が、妙に心地よい。


「……それ、いいね。優愛、ちゃんと見てるんだな」

「うん。なんか、嬉しかった」

「じゃあ、次は溢喜が誰かを救う番かもね」

「……それは無理だって」

「じゃあまた“ガチで”って言う?」

「言わないよ」


希望が笑った。

その笑い声が、今日一日の終わりをやさしく包み込んでいった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。