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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第三章 ふたりの特別な時間
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第二十二話 メッセージ

席替えが終わった放課後。

校門を出て、優愛と並んで歩く。

夕方の風が少しだけ涼しくて、夏の終わりを感じさせる。


そのとき、優愛がスマホを見ながらぽつりとつぶやいた。

「……おじいちゃんからメッセージ来てたんだけど」

「メッセージ?なんて書いてあるの?」

「読んでみるね」

優愛は画面を見ながらゆっくり読み上げる。


『俺の愛しの可愛い孫よ。

前に、はとこたちで集まっただろう?

あの時、俺がいたせいでみんな、気を使ってたかもしれない。

仲良くなれてなかったかもしれない。

そこで提案だ。

今度は、はとこたちだけで何か話し合うっていうのはどうだ?

別に、どこかに遊びに行ったりしてもいいし。』


読み終えた優愛は、少しだけ眉を寄せた。

「……これ、本気みたい」

「……本当?」

僕は思わず聞いた。

「うん。たぶん、他のはとこたち全員にも送ってると思う……」

僕も急いでスマホを取り出す。

ロック画面には一件の通知が来ていた。

送ってきたのは……優誓おじいちゃん。


「本当にごめんね。うちのおじいちゃん……」

優愛の声は、どこか申し訳なさそうだった。

「そんなに何回も謝らないで。君が悪いわけじゃないんだよ」

僕はスマホをポケットに入れながら言う。


優愛は小さく笑ったあと、ふと空を見上げてつぶやいた。

「でもね、おじいちゃん、この前すごく喜んでたよ」

「え?なんで?」

僕は驚いて聞き返す。

「だって、前にも言ったように……おじいちゃん、娘しかいないって言ってたじゃん。

本当は、息子が欲しかったみたいなんだよね」

「息子が……欲しかった?」

優愛が続ける。

「おじいちゃん、本当はね——キャッチボールしたり、サッカーしたり、釣りしたり、ドライブに行ったり……色々やりたいことがあったんだよ。でも、お母さんも私も、あんまり外遊びが好きじゃなかったから……。溢喜と遊べて凄い楽しかったと思う」


「そうか……そうだったのか」

優誓おじいちゃん、本当は寂しがり屋だったのかな。

だから僕に、あんなに構ってくれていたのか。


「……いいおじいちゃんだね」

僕がそう言うと、優愛が首をかしげる。

「え、どうして?」

「だってさ。息子が生まれてこなくても、たとえ孫が女の子だったとしても、大切に育ててくれる人って、すごく優しい人じゃん。……優愛みたいに」

その言葉に、優愛は黙り込んだ。

風が少しだけ強く吹いて、彼女の髪が揺れる。


え……僕、なんか変なこと言った?

気まずい空気が流れる。

ただ、僕は優誓おじいちゃんがかっこいいって思っただけなんだけど。


しばらくして、優愛がぽつりとつぶやいた。

「……そっか。ありがとう」

その声は、少しだけ震えていた。

でも、ちゃんと僕の方を向いていた。


良かった〜。

別に、無視されたわけじゃなかったんだ。


そのまま僕たちは、並んで歩き続けた。

言葉は少なかったけれど、沈黙が気まずくはなかった。

風がまた吹いて、彼女の髪が揺れる。

その瞬間、僕はふと、優誓おじいちゃんのメッセージのことを思い出した。


——はとこたちだけで、何か話し合うっていうのはどうだ?


何かが始まる予感。

それは、家族のことかもしれないし、僕たちのことかもしれない。

まだはっきりとは分からないけれど、

それでも、今この時間が、少しだけ特別に思えた。


僕はそっと、優愛の歩幅に合わせて歩いた。

それだけで、なんだか十分な気がした。

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