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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第八章 冬の寒さと、恋の温かさ
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第百九十話 画面越しのファッションショー、旅行へのカウントダウン

「ふぅ……。任務完了」


自室に戻った僕は、ベッドの上にドサリと買い物袋を広げた。

今日一日歩き回って手に入れた戦利品の数々。

優愛が選んでくれたワインレッドのニット、細身のパンツ、そして暖かそうなインナー。

どれも普段の僕なら選ばないようなアイテムだけど、優愛が「似合う」と言ってくれたものなら、間違いはないだろう。


「さて、タグ切ってハンガーにかけるか」


重い腰を上げかけたその時、スマホが軽快な着信音を奏でた。

画面には『優愛(ビデオ通話)』の文字。

まだ別れてから一時間も経っていないのに、寂しくなったのだろうか。

僕は苦笑いしながら、緑色のボタンをスワイプした。


「もしもし、優愛?」


『ヤッホー、溢喜! 見て見て!』


画面いっぱいに映し出されたのは、いつもの部屋着……ではなく、今日買ったばかりの新しい服を着た優愛の姿だった。

白いふわふわのニットに、僕が「いいな」と言ったチェック柄のスカート。

彼女はスマホを少し離して、くるりと回ってみせた。


『ジャーン! 早速着てみました! どうかな?』


画面越しでも伝わってくる、その破壊力。

スカートの裾がふわりと揺れ、彼女の笑顔が弾ける。

背景の勉強机や本棚といった生活感とのギャップが、逆に「彼女感」を強調していて直視できない。


「……似合ってる。店で見た時より、可愛いかも」


僕が素直に感想を言うと、優愛は画面に顔を近づけてニシシと笑った。


『えへへ、ありがと! 旅行の初日、これで行くからね』


『おう。楽しみにしてる』


『で、溢喜は? まさか、まだ袋から出してないとか言わないよね?』


優愛の目が鋭く光る。

図星だ。


「……今、出そうとしてたところ」


『だーめ! 今すぐ着てみて! サイズ感とか、家で着てみたら違ったってことあるし、私がチェックしてあげるから!』


「ええ……今から着替えるのか?」


『当たり前でしょ! ほら、三分待つから!』


画面の向こうで優愛が腕組みをして仁王立ち(座っているけど)している。

逆らっても無駄だ。

僕は観念してスマホを立てかけ、カメラの画角から外れて着替えを始めた。

買ったばかりのニットに袖を通す。

新品特有の匂いと、少し硬い感触。


「……お待たせ。どうだ?」


再びカメラの前に戻ると、優愛が目を丸くして、じっと画面を見つめてきた。

数秒の沈黙。


「……優愛さん? もしかして変か?」


『……ううん。違う』


優愛が首を横に振る。

そして、少し頬を染めて、ぼそりと呟いた。


『……やっぱり、カッコいいなって。私の見立てに間違いはなかった』


「……そりゃどうも」


『溢喜、背高いからロングコートも似合うと思うんだよね。次は春服デートでコーディネートしてあげるね』


もう次のデートの計画まで立てている。

気が早いが、優愛とならきっと楽しいだろう。


『よし! ファッションショーは終わり! 次は持ち物チェックだよ!』


『え、今から?』


『当然! スキーウェアの下に着るものとか、日焼け止めとか、今のうちにリストアップしないと!』


優愛が画面の中でメモ帳を取り出す。

そこからは、一月二日の夜とは思えないほどの熱量で、スキー旅行に向けた作戦会議が始まった。

画面越しに交わす言葉と笑顔。

物理的な距離は離れているけれど、僕たちの心はもう、数日後の雪山へと飛んでいた。


「……あ、そういえばシャンプーとリンス、トラベル用の買った?」


『忘れてた! 溢喜、貸して!』


『自分で買えよ……』


夜が更けていく。

お正月ののんびりした空気は、少しずつ「旅立ちのワクワク」へと変わろうとしていた。

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