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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第八章 冬の寒さと、恋の温かさ
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第百八十五話 茜色の帰路、肩に預けた幸福な重み

「……んごー……ムニャ……」


縁側から大広間に戻ると、おじいちゃんたちのイビキはさらに音量を増していた。

優誓おじいちゃんは豪快に大の字になり、真実おじいちゃんは幸せそうな顔で寝言を呟いている。

この「猛獣たち」を起こすのは忍びないし、何より起きたら第二ラウンドに突入する危険性が高い。


「……そっと帰ろうか」

「うん。それが賢明だね」


僕たちは仲居さんに「お先に失礼します」と小声で伝え、逃げるように、けれど感謝を込めて一礼し、屋敷を後にした。


玄関を出ると、空は美しい茜色に染まっていた。

行きと同じ黒塗りのセダンが、車寄せで待機している。

運転手さんがドアを開けてくれ、僕たちは再び後部座席へと滑り込んだ。


「ふぅ……」


シートに座った瞬間、優愛が長く、深い息を吐いた。

緊張の糸が切れたのか、その表情には隠しきれない疲労感が滲んでいる。


「お疲れ、優愛。やっぱり着物は疲れるよな」

「うん……。綺麗で嬉しいんだけど、帯がちょっと苦しくて、背中がバキバキかも」

「マッサージしてやりたいけど、この格好じゃな」

「ふふ、気持ちだけで十分だよ」


車が静かに走り出す。

心地よい振動と、暖房の効いた車内。そして窓から差し込む夕日が、眠気を誘う。

優愛はしばらく窓の外を流れる景色を眺めていたが、やがてカクン、と頭を揺らした。


「……眠い?」

「うん……ちょっとだけ……」

「寝ていいよ。家に着いたら起こすから」

「……じゃあ、お言葉に甘えて……」


優愛はモゾモゾと身じろぎすると、遠慮がちに僕の左肩に頭を預けてきた。

髪飾りの赤い花が、僕の顎のあたりに触れる。

整髪料と、彼女自身の甘い香りがふわりと漂った。


「……重くない?」

「全然。むしろ役得だ」

「ふふ、バカ……」


優愛は小さく笑うと、すぐに安らかな寝息を立て始めた。

長いまつ毛が頬に影を落とし、無防備な寝顔をさらしている。

あんなに強気で、僕を引っ張ってくれる「委員長」の彼女も、今はただの年相応の女の子だ。


僕は振動で彼女が起きないように、体を少し斜めにして支えを安定させた。

ふと、懐に入れたポチ袋の厚みを思い出す。

おじいちゃんたちが託してくれた「活動資金」であり、「将来」への期待。

その重みと、今、肩にかかっている優愛の重み。

二つの重みが、僕に心地よいプレッシャーを与えてくれる。


(……しっかりしなきゃな、僕も)


優愛が安心して眠れる場所を守るために。

そして、いつか本当にこの子と家族になる日のために。


茜色の光が、優愛の寝顔を優しく照らす。

僕は家に着くまで、この愛おしい重みを感じながら、流れる街並みを眺め続けた。

元旦の夕暮れは、静かに、穏やかに過ぎていった。

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