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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第八章 冬の寒さと、恋の温かさ
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第百七十三話 完全防寒の雪だるまと、深夜のデート

スマホでの通話を終えた後も、僕たちはそれぞれの部屋で、ソワソワとした時間を過ごした。

テレビの特番もクライマックスを迎え、いよいよ今年も残すところあと三十分を切った。


「……よし、行くか」


僕はクローゼットから一番厚手のダウンジャケットを取り出した。マフラーを巻き、手袋をポケットにねじ込む。深夜の冷え込みは容赦がないはずだ。


「行ってきます」


リビングで年越し蕎麦(二回目)を食べようとしている父さんと母さんに声をかけ、僕は玄関を出た。


二十三時三十分。

ドアを開けた瞬間、冷蔵庫の中に入ったような冷気が全身を包んだ。


「さっむ……!」


白い息が爆発したように広がる。空からは、ちらちらと細かな雪が舞い落ちていた。

僕は首をすくめながら、隣の家の玄関を見つめる。ほぼ同時に、海波家のドアがガチャリと開いた。


「溢喜! お待たせ!」


飛び出してきたのは、白いロングコートに赤いマフラー、そしてフワフワの耳当てをした優愛だった。

その姿は、まるで雪の妖精……というよりは、可愛らしい雪だるまだ。


「よう。完全装備だな」


「当たり前でしょ! 神社で並ぶんだから、これくらいしないと凍っちゃうよ」


優愛が駆け寄ってくると、ふわりと甘い香りがした。シャンプーの匂いだ。


「似合ってるよ。その耳当て」


「えへへ、ありがと。溢喜のダウンも、暖かそうでいい感じ」


僕たちは自然と距離を詰め、並んで歩き出した。足元では、薄く積もった雪がサクサクと音を立てる。


「結構、人いるな」


通りに出ると、同じように神社を目指す人々の姿がちらほらと見えた。家族連れ、友達同士、そして僕たちのようなカップル。みんな白い息を吐きながらも、どこか楽しげな表情をしている。


「ねえ、溢喜」


優愛が、僕のダウンのポケットをツンツンとつつく。


「ん?」


「手、寒いなーって」


その言葉の意味を察しないほど、僕は鈍感じゃない。僕はポケットから手袋を出そうとして――やめた。代わりに、ポケットの中を空けて、優愛の手を招き入れた。


「……ほら」


「ん! お邪魔しまーす」


優愛の冷たい手が、僕のポケットの中に滑り込んでくる。中でしっかりと指を絡めると、彼女の体温がジンワリと伝わってきた。


「あったかーい」


「優愛の手、冷たすぎだろ」


「だから、溢喜に温めてもらうの」


ニシシと笑う優愛の横顔が、街灯に照らされて輝いている。

遠くから、ゴーン、ゴーンと、除夜の鐘の音が聞こえ始めた。


「あ、鳴り始めた」


「もうそんな時間か。……急ごうぜ、優愛」


「うん! 甘酒が売り切れちゃう前に!」


僕たちは繋いだ手に力を込め、鐘の音が響く神社の森へと足早に向かった。

一年が終わり、新しい一年が始まる。その境界線を、大好きな人と一緒に跨げる幸せを噛み締めながら。

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