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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第八章 冬の寒さと、恋の温かさ
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第百七十一話 不揃いの麺と、一年分の愛

日が暮れて、窓の外は本格的な雪景色に変わっていた。


リビングのテレビからは、大晦日恒例の歌番組が流れている。派手な衣装の歌手たちが今年のヒット曲を熱唱する中、我が家の食卓には、湯気を立てる四つの丼が並んでいた。


「よし、茹で上がったぞ! 優愛ちゃん特製、手打ち年越しそばだ!」


父さんの号令と共に、僕たちは手を合わせた。


「いただきます!」


まずはつゆを絡ませずに、麺だけを一本すする。優誓おじいちゃん直伝というだけあって、蕎麦の香りが鼻に抜ける。太さが少し不揃いなのはご愛嬌だが、むしろその手作り感が食欲をそそる。


「……美味い。店で食べるより美味いかも」


「本当!? よかったぁ……」


僕の感想を聞いて、優愛がほっとしたように胸を撫で下ろす。彼女自身も一口食べると、パァッと表情を輝かせた。


「うん! コシもあるし、大成功だね!」


「優愛ちゃん、本当に上手ねぇ。これならいつでもお嫁に来ても大丈夫よ」


「母さん、またそれ……」


母さんの冷やかしに、優愛は「えへへ」と照れ笑いを浮かべながら、僕の丼に自分の海老天を半分乗せてきた。


「はい、溢喜。作った人の特権で、サービス」


「……サンキュ。太らせる気か?」


「幸せ太りってことで」


家族と、恋人と囲む大晦日の食卓。


ズルズルと蕎麦をすする音が、テレビの音に混じって響く。太い麺があったり、短い麺があったり。不揃いだけど、温かくて優しい味。それはまるで、僕と優愛のこの一年を表しているようだった。


喧嘩もしたし、すれ違いもした。泣いた日もあれば、こうして笑い合った日もある。凸凹だけど、二人で紡いできた時間は、何よりも味わい深い。


「ごちそうさまでした。……美味しかったぁ」


完食して箸を置くと、優愛が満足げに息を吐いた。


「さてと。私は一旦家に帰るね。お風呂入って、お父さんと一緒に紅白の最後見届けなきゃだから」


「ああ。じゃあ、また後でな」


「うん! 十一時半に、玄関前で集合ね!」


優愛はエプロンを外し、またすぐに会えることを確認して帰っていった。


除夜の鐘が鳴るまで、あと数時間。


今年最後の大イベント、二年参り(初詣)が待っている。僕は優愛が残していった温かな余韻を感じながら、新しい年を迎える準備を始めた。

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