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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第八章 冬の寒さと、恋の温かさ
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第百七十話 大晦日の粉まみれ、そば打ちの至近距離

Hello 你好 こんにちは!Takayuです。


いつも読んでいただきありがとうございます!

もっと皆さんが読みやすい時間にしたいと思い、今日から投稿時間を【朝6:00】と【夕方17:00】に変更して、しばらく試してみようと思います!

通学・通勤中や、学校・お仕事帰りの息抜きに楽しんでいただけたら嬉しいです。


それでは、また後で。See you later!

翌朝、十二月三十一日。大晦日。

朝から家の神棚を掃除したり、お節料理を重箱に詰めたりと、我が家は正月の準備で慌ただしかった。

そんな中、インターホンが軽快に鳴り響いた。


「溢喜ー! はーい、お待たせ!」


玄関を開けると、そこには割烹着かっぽうぎ姿で、麺棒と大きなボウルを抱えた優愛が立っていた。

気合が入りすぎている。

いや、割烹着が似合いすぎていて、新妻というよりは、老舗旅館の若女将みたいだ。


「……おはよう、優愛。その格好は?」

「おはよう! おじいちゃん(優誓)直伝の手打ちそば、作るんでしょ? 服が汚れないように、お母さんから借りてきたの」

「なるほど。準備万端だな」

「もちろん! 今年の締めくくりだもん、美味しいの食べさせてあげる!」


優愛は自信満々に胸を張り、我が家のキッチンへと乗り込んだ。

母さんも「あら優愛ちゃん、助かるわぁ」と場所を空けてくれる。

こうして、僕と優愛の「年越しそば打ち大会」が幕を開けた。


「まずは、そば粉と小麦粉を混ぜて……水を少しずつ入れるの」

「へえ、結構繊細なんだな」

「そうだよ。ここが一番大事なんだから」


ボウルの中で粉を混ぜる優愛の表情は真剣そのものだ。

サラサラとした粉が、少しずつ固まりになっていく。

僕も横からボウルを抑えたり、水を入れるのを手伝ったりする。


「よし、こねるよ! 溢喜も手伝って!」

「了解」


二人で並んで、生地に力を込める。

ギュッ、ギュッ、とリズミカルに押すたびに、肩が触れ合う。

昨日はベランダ越しで触れられなかった分、こうして隣にいて、体温を感じられることが嬉しくてたまらない。


「……なんか、楽しいな」

「うん。共同作業って感じ」


優愛が顔を上げて、ニカっと笑う。

その拍子に、彼女の頬に白い粉がついているのに気づいた。


「あ、優愛。顔、粉ついてる」

「え? どこ?」

「ここ。……じっとしてて」


僕は自然に手を伸ばし、彼女の頬についた粉を親指で拭った。

柔らかい肌の感触。

指を離すと、優愛は少しだけ顔を赤らめて、上目遣いで僕を見ていた。


「……ありがと」

「……どういたしまして」


一瞬、キッチンに甘い沈黙が流れる。

至近距離で見つめ合う二人。

キスのひとつでもしそうな雰囲気――だったが、リビングの方から「おーい、順調かー?」という父さんの呑気な声が聞こえてきて、僕たちはパッと離れた。


「じゅ、順調です! もうすぐ伸ばします!」

「そ、そうだね! 麺棒、麺棒!」


慌てて作業を再開する。

生地を薄く伸ばし、包丁で切っていく。

トントン、という音と共に、少し太さは不揃いだけど、美味しそうな蕎麦が出来上がっていく。


「できたー! どうかな、溢喜?」

「すげえ。ちゃんと蕎麦になってる」

「ふふん、でしょ? これでいい年が越せそうだね」


皿に並べられた手打ちそばを見て、優愛が満足げに笑う。

その笑顔を見ているだけで、僕にとっても今年は最高の一年だったと思える。


「よし、じゃあ茹でるのは夜のお楽しみにして……」

「一旦休憩するか。お茶淹れるよ」


粉まみれになった手を洗い、こたつでお茶を飲む。

窓の外では、ちらちらと雪が舞い始めていた。

激動の一年が、もうすぐ終わろうとしている。

でも、僕らの物語は、来年も、その先も、ずっと続いていくんだ。

隣で湯呑みをすする優愛の横顔を見ながら、僕は改めてそう確信していた。

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