第十七話 看病する幼馴染
部屋の扉が開く音がした。
「ご飯できたわよ」
優愛がそう言う。
僕はなんとか体を起こして、ご飯を食べようとする。
「ほら、無理しないで」
そう言う優愛に、僕は弱々しく答える。
「でも……無理してでも、ご飯食べないと……」
優愛は少しニヤッと笑って言った。
「じゃあ、私が食べさせてあげる」
「え、今なんて……?!?」
思わず心臓が跳ねる。
食べさせてあげるって言ったよな……。
いや、反論しようとしたけれど、言葉は出ない。
「いいの。ほら、美味しそうでしょ?」
僕の話を逸らして優愛が言う。
完全に主導権を握られている気がした。
そうか……男と女では力の差があると言うけれど、具合が悪いときは女の方が強いのかもしれない。
今は力でも口でも、抵抗できないのだから。
優愛はおかゆをスプーンに乗せ、僕の口元に運ぶ。
「ふー、ふー。はい、あーん」
その顔、その言葉、その仕草、すべてが可愛い……。
「あ…あーん」
恥ずかしいが、僕は何とか口を開けて食べる。塩の味だ。やっぱり梅干しじゃなくて塩にしてくれたのか。ちょっとしょっぱいけれど、食べられる。
僕は食べ続けながら、ふと考える。
これって、他の人から見たらどう映るんだろう。
母と子供?姉と弟?それとも彼氏と彼女?いやいや、さすがにそこまで考えるのはやめよう……。
でも、目の前で優愛が微笑みながら食べさせてくれる姿を見ていると、不思議と胸の奥が温かくなる。
こんなに優しい幼馴染がそばにいてくれるなんて、僕は本当に幸せだ。
「はい、あーん」
優愛が言う声に僕は小さく笑い、口を開ける。
スプーンに乗ったご飯が口に入るたびに、熱と倦怠感が少しずつ和らいでいく。
「ふふ、ちゃんと食べられたじゃない」
優愛の笑顔に、僕は自然と力が抜ける。
食べ終わると、優愛は少し考えるように言った。
「他に何かしてほしいことある?」
僕はしばらく迷った後、弱々しく答える。
「強いて言うなら……このまま一緒にいてほしいかな」
「え?」
優愛は少し驚いたようだった。
「……だって、一人でいるのが寂しいから」
思わず本音が出てしまった。こんなこと言っちゃっていいのか、ちょっと恥ずかしいけど、もう口が止まらなかった。
優愛はニッコリ笑って、僕のそばに座った。
「いいわよ、少しだけなら」
その時僕らは、何かしたわけでも、話したわけでもない。
ただ同じ空間で同じ時間を過ごす。寂しい時にそばにいてくれる。
そんな友達、そんな幼馴染、そしてそんな好きな人がいて、僕は本当に幸せだと思った。




