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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第八章 冬の寒さと、恋の温かさ
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第百五十話 コントローラーの奪い合い、敗者の罰ゲーム

「ごちそうさまでした!」


二人で手を合わせ、空になったお皿を見下ろす。

満腹感と、コタツの温もり。

このまま横になれば、間違いなく極上の昼寝コースへと突入できるだろう。

だが、それではせっかくの「自由時間」が夢の中で終わってしまう。


「ねえ溢喜。寝るのは禁止だよ」

「……心読んだ?」

「顔に書いてあるもん。せっかくおじさんたちがいないんだから、もっと遊ぼうよ」


優愛は皿洗いを手伝ってくれながら(正確には、ジャンケンに負けた僕が洗っているのを横で拭いてくれながら)、楽しそうに提案してきた。


「遊ぶって、何する?」

「んー……あ、久しぶりにあれやりたい! レースゲーム!」

「ああ、昔よくやってたやつか。いいけど、僕に勝てると思ってんの?」

「ふふん、クルーズ船のゲーセンで鍛えた腕前を見せてあげるよ」


後片付けを終えた僕たちは、二階の僕の部屋へと移動した。

テレビの電源を入れ、ゲーム機を起動する。

埃をかぶっていたコントローラーを二つ取り出し、一つを優愛に手渡した。


「コースはランダム、アイテムあり。三回勝負ね」

「望むところだ。負けた方は……どうする?」

「罰ゲームありにしよう。勝った方のお願いを一つ聞くこと」

「OK。後悔するなよ?」


カセットを読み込む懐かしい音と共に、戦いの火蓋が切って落とされた。

画面の中では、デフォルメされたキャラクターたちがカートに乗り込み、エンジンをふかしている。

スタートの合図と共に、僕たちは同時にアクセルボタンを押し込んだ。


「あ、ちょっと溢喜! 邪魔しないでよ!」

「レースは非情なもんなんだよ!」


一戦目は、僕がバナナの皮で見事に優愛をスピンさせ、そのままゴールイン。

悔しがる優愛の横で、僕は勝ち誇った笑みを浮かべる。


「次! 次は負けないから!」


しかし、二戦目は優愛が意地を見せた。

ショートカットを完璧に決め、僕に逆転勝利。

これで一勝一敗。勝負の行方は最終戦へともつれ込んだ。


「……負けない」

「こっちこそ」


優愛の目がマジだ。

画面を食い入るように見つめ、コントローラーを握る手に力が入っている。

僕も負けじと集中する。

最終ラップ、二台のカートが並走し、デッドヒートを繰り広げる。

ゴール直前、僕がアイテムを使おうとした、その瞬間だった。


「……えいっ!」

「うわっ!?」


優愛が突然、体を寄せてきて、僕の肩に頭突きをしてきたのだ。

物理攻撃!?

その衝撃で指先が狂い、僕のカートはコースアウト。

その隙に優愛のカートが悠々とゴールラインを通過した。


「やったー! 私の勝ちー!」

「ちょ、今の反則だろ!?」

「何のことー? 画面に集中してない溢喜が悪いのー」


優愛は悪びれもせず、ベッドの上でガッツポーズを決めている。

ずるい。でも、その無邪気な笑顔を見せられたら、怒る気も失せてしまう。


「はあ……わかったよ、僕の負けだ。で、罰ゲームは何?」

「えっとね……」


優愛は人差し指を唇に当てて少し考えると、ニヤリと悪戯っぽく笑った。

そして、ベッドにぺたんと座り、自分の太ももをポンポンと叩いた。


「じゃあ、罰ゲーム。……ここでお昼寝すること」

「は?」

「膝枕、してあげる。さっき眠そうだったでしょ? 溢喜が寝るまで、私がよしよししてあげる権」

「それ、僕にとって罰ゲームか……?」

「さあね? 恥ずかしがって寝られないなら、罰ゲームになるかもよ?」


優愛は楽しそうに、もう一度太ももを叩いた。

拒否権はないらしい。

僕は観念して、というか内心ドキドキしながら、彼女の膝の上に頭を預けた。

柔らかい感触と、優愛の甘い匂いに包まれる。


「よしよし、お疲れ様。私の可愛いパートナーさん」


優しく髪を撫でる手が、魔法のように僕の意識を溶かしていく。

ゲームには負けたけれど、この敗北なら悪くない。

僕は窓から差し込む午後の日差しを感じながら、心地よい微睡みへと落ちていった。

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