第百四十五話 広がる輪、深まる冬
「――よし、送信っと」
ファミレスでの作戦会議(?)を終え、家に帰った僕は、はとこたちのグループチャットに、スキー旅行の提案メッセージを送った。
隣の家では、きっと優愛も同じ画面を見ているはずだ。
数分もしないうちに、スマホが連続して震えだした。
『スキー!? 行く行く! 絶対行くー!』
流満ちゃんの、勢いのあるスタンプ付きの返信。
『いいね。冬休み、ちょうど暇してたところだし』
幸葵さんからの、クールだけど嬉しそうな返信。
『あら、楽しそう。車の手配とかは、お姉さんに任せておいて』
大学生の和満さんからの、頼もしい申し出。
「……早っ」
思わず笑ってしまうくらいの、即答ぶりだった。
きっと、みんな、待っていたんだ。
またこうして、集まれることを。
続けて、優愛から個別のメッセージが届く。
『瀧川先輩たちにも連絡したよ。「面白そうだな。杏奈も乗り気だし、参加させてもらう」だって!』
これで、メンバーは決まりだ。
僕と優愛、希望と美褒、瀧川先輩と杏奈先輩。
そして、はとこ会のみんな。
総勢十名以上の、大所帯でのスキー旅行。
(……これ、絶対楽しいやつだ)
想像しただけで、ワクワクが止まらない。
少し前までの僕なら、「人付き合いが面倒くさい」とか言って、部屋に引きこもっていたかもしれない。
でも、今は違う。
優愛と一緒に、みんなの笑顔を作ることが、こんなにも楽しみだなんて。
『了解。じゃあ、宿の手配とか、また明日相談しようぜ、委員長』
『うん。任せて、副委員長』
スマホの画面越しに交わす、二人だけの秘密の呼び名。
それが、くすぐったくて、心地いい。
窓の外では、いつの間にか、雪がちらつき始めていた。
僕らの街にも、本格的な冬がやってくる。
でも、今年の冬は、きっと寒くない。
だって、こんなにも温かい「輪」が、僕の周りにはあるのだから。




