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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第八章 冬の寒さと、恋の温かさ
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第百四十三話 旅の報告と、僕らの日常

『……おかえり』


昨夜、電話の向こうから聞こえてきた、希望の不意打ちで優しい言葉。

その温かさは、旅の疲れを癒すには、十分すぎた。


翌朝、土曜日。

僕は、少しだけ寝坊して、リビングへと向かった。

一週間の非日常から、いつもの日常へと、体がゆっくりと馴染んでいくのを感じる。

朝食を食べながら、僕はスマホを取り出し、優愛にメッセージを送った。


『おはよう。希望と美褒へのお土産、どうする?』

すぐに、返信が来る。

『おはよう! 私も、どうしようかと思ってた。一緒に、渡しに行かない?』

『そうだな。じゃあ、昼過ぎに、駅前のファミレスとかで待ち合わせるか』

『うん! 連絡しとくね!』


その、あまりにもスムーズなやり取り。

もう、僕らの間には、一つの目標に向かって協力する、ということが、当たり前になっていた。


昼下がり、駅前のファミレス。

僕らが少しだけ早く着いて待っていると、「よう!」という威勢のいい声と共に、希望と美褒がやってきた。


「おかえり、お二人さん! で、どうだったんだよ、一週間の愛の逃避行は!」

「逃避行じゃないだろ!」

希望の、いつも通りのからかいに、僕も、いつも通りにツッコミを入れる。

その、変わらないやり取りが、たまらなく、心地よかった。


「はい、これ。お土産」

僕と優愛が、それぞれ紙袋を差し出すと、二人は「おお!」と、子供みたいに目を輝かせた。

中に入っているのは、寄港地で買った、手作りの貝殻のキーホルダーと、色とりどりのチョコレート。


「うわ、可愛い! ありがとう、ゆーちゃん!」

「サンキュ! 大事にすっぜ!」


四人で席につき、僕と優愛は、この一週間の出来事を、写真を見せながら、洗いざらい報告した。

僕が、プールで無様に落ちた話をすれば、希望は腹を抱えて笑い転げ。

優愛が、サンドアート教室でヤキモチを焼いた話をすれば、美褒が「ゆーちゃん、可愛い」と、目を細める。


そして、クリスマスイブの夜に、僕らが同じ「星空」のモチーフのプレゼントを交換し合った話をすると……。


「……お前ら、もう、出来すぎだろ……!」

希望が、呆れたように、でも、心の底から嬉しそうに、そう言った。

その言葉に、僕と優愛は、どちらからともなく顔を見合わせ、はにかんでしまう。


その、甘い空気。

僕は、テーブルの下で、そっと、優愛の、膝の上に置かれていた手に、自分の手を、伸ばした。

彼女の指先が、びくりと小さく震える。

でも、すぐに、僕の意図を察してくれたのか、優しく、その手を、握り返してくれた。


テーブルの上では、希望と美褒が、旅の話で盛り上がっている。

テーブルの下では、僕と優愛が、二人だけの、秘密の温もりを、分かち合っている。

この、四人でいるのに、二人きりのような、不思議な感覚。

それが、たまらなく、くすぐったくて、幸せだった。


「――でさ、せっかくまだ冬休みなんだし、どっか行かねえ?」

希望が、何かを思いついたように、言った。

「お前らの、惚気話聞いてたら、俺も、なんか、どっか行きたくなった」

その、あまりにもストレートな言葉に、隣にいた美褒の頬が、ふわりと、赤く染まったのを、僕は、見逃さなかった。


僕と優愛は、どちらからともなく、顔を見合わせる。

そして、ニヤリと、悪戯っぽく、笑い合った。

僕らの、大切な親友たちの、新しい物語も。

どうやら、もうすぐ、始まりそうな、予感がしていた。

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