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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第七章 恋人たちの航海
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第百三十九話 終わりの始まり

「……私の、勝ち、だね」


僕の耳元で、そう言って、楽しそうに笑う優愛。

僕はもう、何も言い返すことができなかった。

僕らの、忘れられない一週間の旅。その最終日の朝は、僕の、完膚なきまでの、甘い、甘い、敗北で、幕を開けた。


朝食のレストラン。

僕らは、どちらからともなく、昨夜の出来事を思い出して、少しだけ、はにかんでしまう。

僕が、少しだけ拗ねた顔で優愛を見ると、彼女は「ごめんって」と、楽しそうに笑うだけだった。


「……今日で、終わりだね」

パンをかじりながら、僕が、ぽつりと呟いた。

「……うん」

優愛の声も、少しだけ、寂しそうだ。


その日の午前中、僕らの船は、ゆっくりと、僕らが住む街の港へと、進路を取っていた。

僕と優愛は、二人で、部屋の荷造りを始めた。

一週間分の、思い出が詰まった荷物。

来た時よりも、なんだか、ずっと重くなっているような気がした。


「……あ」

優愛が、小さな声を上げた。

見ると、彼女は、僕がプレゼントした、星の砂のネックレスを、大事そうに、胸元で握りしめている。

僕も、ポケットの中から、彼女にもらった、星空のパスケースを取り出した。


「……帰っても、ちゃんと、毎日使うからな」

僕がそう言うと、優愛は「うん」と、嬉そうに頷いた。

「私も。……一生、大切にする」


その言葉が、僕の心に、温かく、染み渡っていく。

僕らは、荷造りの手を止め、どちらからともなく、船室の丸窓の前に立った。

窓の向こうには、見慣れた景色が、少しずつ、大きくなってくる。

僕らの、帰るべき場所。


「……着いちゃうね」

「ああ」


優愛が、そっと、僕の手に、自分の手を重ねてきた。

僕は、その手を、優しく、握り返す。


「……帰りたくないな」

優愛が、子供みたいに、ぽつりと、呟いた。

その、あまりにも素直な言葉に、僕の胸が、きゅっと、締め付けられる。


「……僕もだよ」


でも、分かっている。

この旅は、いつか、終わる。

でも、僕らの物語は、終わりじゃない。


僕は、繋いだ手に、少しだけ、力を込めた。

そして、窓の外の景色から、隣に立つ、大切な彼女の横顔へと、視線を移した。


僕らの、忘れられない一週間の旅が、もうすぐ、終わろうとしていた。

でも、僕の心の中には、不思議と、寂しさだけではなかった。

この旅で得た、たくさんの宝物と、確かな絆。

それを胸に、また新しい毎日が始まるのだという、温かい期待感が、確かに、そこにはあった。

時計の針は、もうすぐ、昼を指そうとしていた。

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