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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第七章 恋人たちの航海
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第百三十五話 君と僕の、未来予想図

「当たり前でしょ」


最高の笑顔で、そう言ってくれた、優愛。

その言葉の温かい余韻に包まれたまま、僕らは、レストランを後にした。

部屋に戻るには、まだ、少しだけ早い。

僕らは、どちらからともなく、船の最上階にある、静かな展望ラウンジへと、足を向けた。


大きな窓の向こうには、宝石を散りばめたような、満点の星空が広がっている。

僕らは、窓際のソファに並んで腰を下ろし、温かいココアを飲みながら、その美しい光景を、黙って眺めていた。


「……なんか、不思議な感じ」

優愛が、ぽつりと、ガラス窓に映る僕らの姿を見ながら、呟いた。

「何が?」


「ううん。……数ヶ月前まで、こんな未来が来るなんて、全然、想像もしてなかったなって」

彼女は、自分の胸元で輝く、星の砂のネックレスに、そっと触れた。


「光道家のこととか、跡継ぎのこととか……。正直、どうしていいか分からなくて、すごく、怖かった。でも……」

彼女は、僕の顔を見て、柔らかく、微笑んだ。

「今は、もう、怖くない。溢喜が、隣にいてくれるから」


その、あまりにもストレートで、あまりにも温かい言葉。

僕の心は、どうしようもないくらいの幸福感で、満たされた。

僕は、そっと、彼女の手に、自分の手を重ねた。


「……僕も、同じだよ」

「え?」


「僕も、想像してなかった。僕が、こんな風に、優愛の隣で、優愛の手を握ってる、未来なんて」


僕の言葉に、彼女の頬が、ふわりと、朱に染まる。


「……じゃあさ」

僕が、少しだけ、悪戯っぽく、続けた。

「もっと、想像してみないか? これからの、僕らの未来」

「未来……?」


「ああ。……例えば、十年後。僕らは、何してると思う?」


僕の、唐突な問いかけ。

優愛は、一瞬きょとんとした後、すぐに、楽しそうに、目を輝かせた。


「十年後……! えっとね、溢喜は、きっと、光道の会社で、新しい商品の企画とかしてる! 今みたいに、みんながワクワクするような、すごいアイデアを、たくさん出して!」

「ははっ、そうだといいけどな。……じゃあ、優愛は?」

「私は、その隣で、社長として、ハンコを押してる!」

「うわ、委員長、出世したな!」


僕らは、顔を見合わせて、子供みたいに、声を上げて笑い合った。


「でも、休みの日は、ちゃんと、二人で、旅行に行くの。今みたいに」

「いいね。そのときは、どこに行く?」

「んー……。オーロラ、とか見てみたいな!」

「おお、いいな」


十年後の、僕と優愛。

それは、まだ、ぼんやりとした、夢物語かもしれない。

でも、不思議と、僕には、その光景が、はっきりと、目に浮かぶようだった。

僕の隣で、今と少しも変わらずに、最高の笑顔で、笑っている、彼女の姿が。


僕らの、忘れられないクリスマスの夜。

それは、ただ甘いだけじゃない。

二人の未来へと続く、新しい地図を、一緒に描き始めた、忘れられない、始まりの夜になった。

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