表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第七章 恋人たちの航海
132/182

第百三十二話 君と歩く、光の中

賑やかで、幸せな朝食の後。

瀧川先輩と杏奈先輩は、「これから、二人でゆっくり映画でも見る」と言って、僕らにウインクを残し、去っていった。


「僕らは、どうする?」

「んー……。もう、お土産は買ったしね」

「そうだな」


僕らは、特に計画を立てるでもなく、ただ、気の向くままに、船内を散策することにした。

クリスマス一色に飾られた船内は、どこを歩いても、楽しそうな乗客たちの笑顔で溢れている。

僕らも、自然と、手を繋いでいた。


僕らが、自然と足を向けたのは、船の最上階にある、ガラス張りの展望ラウンジだった。

昼間のラウンジは人も少なく、静かで、落ち着いた音楽が流れている。

僕らは、大きな窓の前に置かれた、ふかふかのソファに、並んで腰を下ろした。


目の前には、どこまでも続く、青い空と、青い海。

太陽の光が、きらきらと、海面に反射している。


「……すごいね」

「ああ……」


僕らは、しばらく、その美しい光景を、黙って見つめていた。

言葉は、いらない。

ただ、君が隣にいて、同じ景色を見ている。

それだけで、僕の心は、どうしようもないくらいの幸福感で、満たされていった。


「……ねえ、溢喜」

不意に、優愛が、僕の肩に、こてん、と頭を預けてきた。

「ん?」

「……幸せだね」


その、あまりにもストレートで、あまりにも素直な言葉。

僕は、照れくさくて、何も言い返せなかった。

ただ、繋いでいた彼女の手に、きゅっと、少しだけ、力を込めた。


どれくらいの時間が、経っただろうか。

僕らは、そのまま、互いの温もりを感じながら、穏やかな時間を過ごしていた。

ふと、優愛が、何かを思い出したように、顔を上げた。


「そういえば、さっき、美褒からメッセージが来てたんだ」

「美褒から?」

「うん。『クリスマスパーティー、楽しんでる?』だって。それと、『お土産、よろしくね!』って」


親友からの、いつも通りのメッセージ。

それに、僕らは、どちらからともなく、吹き出してしまった。


「あいつら、元気にしてるかな」

「きっと、希望くんと、二人でどこかに出かけてるんじゃない?」

「ああ、ありえるな。で、希望が、また何かやらかして、美褒に呆れられてる、と」

「ふふっ、目に浮かぶね」


僕らの、大切な、もう二人の仲間。

彼らがいてくれたから、僕らは、今、こうして、ここにいる。


「……帰ったら、ちゃんとお礼、言わないとな」

僕が、ぽつりと呟いた。

「うん。そうだね。四人で、また、どこか行きたいな。お土産、渡しながら」


優愛の、その言葉が、僕の胸を、温かくした。

この旅が終わっても、僕らの日常は、ちゃんと、あそこで待っていてくれる。

そして、その日常は、もう、以前とは比べ物にならないくらい、輝かしいものになっているんだ。


僕らの、忘れられないクリスマスの日。

それは、未来への、新しい約束と、温かい希望に満ちた、光のような時間だった。

時計の針は、もうすぐ、昼を指そうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ