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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第七章 恋人たちの航海
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第百三十一話 幸せの味

僕に髪を乾かしてもらった優愛は、今度は、僕がシャワーを浴びている間に、自分の髪を綺麗に結い上げていた。

僕がバスルームから出ると、彼女は、昨日僕がプレゼントした、星の砂のネックレスがよく見えるように、少しだけ襟ぐりの開いた、白いブラウスに着替えていた。


「……」

その、あまりにも分かりやすくて、あまりにも愛おしい「アピール」に、僕は、もう、何も言えなかった。

ただ、どうしようもなく、胸がいっぱいになる。


「……行こっか。朝ごはん」

「うん!」


僕らは、どちらからともなく、そっと、手を繋いだ。

そして、昨日よりも、ずっと自然に、隣に並んで歩き出す。

船内は、朝からクリスマスソングが流れ、あちこちに飾られたリースやイルミネーションが、特別な日の訪れを告げていた。


レストランに着くと、運良く、海が見える窓際の席が空いていた。

ビュッフェ台には、ローストチキンやブッシュドノエルなど、クリスマスらしい、豪華な料理が並んでいる。


「うわー、美味しそう!」

「本当だ。全部、食べきれないな、これ」


僕らが、それぞれの皿に好きなものを乗せ、席に戻ってきた、その時だった。

「よう、お二人さん。メリークリスマス」

「おはよう、青空くん、海波さん」


声をかけてきたのは、やはり、瀧川先輩と杏奈先輩だった。

僕らの隣のテーブルで、二人はすでに、優雅にコーヒーを飲んでいる。


「せ、先輩! おはようございます!」

「おはようございます!」

僕らは、慌てて挨拶を返した。


「なんだよ、お二人さん。昨日、部屋に戻ってから、よっぽどいい夢でも見たのか? なんか、空気が、昨日よりさらに甘ったるいぞ」

瀧川先輩が、ニヤニヤしながら、僕たちの顔を交互に見る。

その、あまりにも的確な指摘に、僕と優愛は、同時に、顔を真っ赤にして、俯いてしまった。


「まあまあ、譲くん。そんなにからかわないの」

杏奈先輩が、優しくたしなめる。そして、優愛の胸元で輝くネックレスに気づいて、目を細めた。

「……素敵なネックレスだね、海波さん。すごく、似合ってる」

「あ……! ありがとうございます……!」


その、あまりにも優しい助け舟に、優愛は、心の底からほっとしたような顔をしている。

僕も、先輩の気遣いに、心の中で、深く感謝した。


結局、その日の朝食は、また四人で一緒に食べることになった。

先輩カップルは、僕らが知らない、船内のおすすめの場所や、面白いアクティビティについて、楽しそうに教えてくれる。

その、どこまでも自然で、頼りになる雰囲気。


僕は、向かいの席で、杏奈先輩と楽しそうに話している、優愛の横顔を、そっと盗み見た。

彼女が、笑っている。

僕が今まで見た中で、一番、幸せそうに。

その笑顔を見ているだけで、僕の心も、温かいもので、満たされていく。


特別なことは、何もない。

ただ、好きな人と、大切な仲間たちと、美味しい朝ごはんを、一緒に食べているだけ。

でも、その、当たり前の時間が、今は、世界で一番、幸せで、かけがえのない宝物のように、感じられた。

僕らの、忘れられないクリスマスは、最高の形で、その一日を、スタートさせていた。

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