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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第二章 修行の始まり
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第十三話 修行は海へ!

土曜日の朝。

小鳥のさえずり、美味しい空気、そしてやわらかな日の光。

ああ、ずっとこのまま寝ていたい。

布団から一歩も動きたくない。

そう思っていたのも束の間——


急に息が苦しくなった。

吸おうとしても吸えない。

苦しい。


慌てて起き上がると、横でニヤニヤしていたのは美褒だった。

その隣には、僕を引いた目で見ている優愛がいた。


「え、俺……なんか変なことしてた?」

そう聞くと、美褒は笑いながら答えた。

「だってさー、溢喜。めちゃめちゃ面白かったよ〜」


「……何が?」

「寝相。私が鼻つまんでる時、ずっと意味わかんないこと言ってたし」


ああもう、だめだ。

まさか美褒も、優誓おじいちゃんと同じ“いじり属性”だったとは。


「結局、何の夢見てたのよ」

優愛が、小さく嫌そうな声で言った。


夢……なんだっけ。

何か見た気もするけど、思い出せない。


そのとき、遠くから声が響いた。

「おーい、起きたかー!朝ごはんだぞー!」

優誓おじいちゃんの声だった。

もうそんな時間なのか。


僕は布団から起き上がり、優愛と美褒に連れられて食卓へ向かった。

テーブルには、豪華な肉、野菜、魚——もう何もかも揃っていた。


「うわー……すごい」

思わず声が漏れる。

「好きなだけ食え」

優誓おじいちゃんが言った。


その言葉通り、僕は好きな分だけ食べた。

朝から肉なんて、最高すぎるだろ。


すると隣に座っていた優愛が、急にサラダを盛った皿を僕に渡してきた。

「食べて」

「え……ガ…ホントに?」

「あ、また“ガチで”って言おうとした」


言うんじゃなくて、言おうとするのまでダメだなんて……。

なんでこんなに僕は弱いんだろう。

朝から、心がざわつく。


朝ごはんを食べ終えると、優誓おじいちゃんが立ち上がって言った。

「では今日の修行について、軽く話そう」


……やばい。修行って何?

山登り?滝行?絶対キツいやつじゃん。


「これから車でドライブして、海まで行こう!釣りして、泳いで、海を満喫するぞ!」


釣り……泳ぐ……海……。

ちょっと待て、何言ってるんだ、この人。

昨日、あんなに真面目な顔で「修行だ」って言ってたのに。

まさか、ただ行きたいだけなんじゃ……?


優誓おじいちゃんが僕の方を見て、ニッコリ笑った。

「そうだ。溢喜は特別に、俺と一緒に行こうじゃないか!」


……何が“特別”だよ。

ドライブも釣りも泳ぎも、全部セットで“修行”ってこと?

おじいちゃんの目がキラキラしてて、断りづらい。

好きな人の祖父だし、変な態度取るのも悪いし……。


「……わかりました」

仕方なく、そう答えた。

「よし、じゃあ行くぞ!他のみんなも、海へ出発だ!」


「そういえば、着ていくものはあるの?昨日は学校帰りだったし、制服しかないよ?」

優愛が聞いた。


「安心しろ。事前に用意しておいた!」

何が“安心しろ”だ。一ミリも安心できない。


着替えを済ませると、僕は優誓おじいちゃんのスポーツカーに乗ることになった。

「そうだ、溢喜と一緒に俺の車に乗ってくるやつはいるか?」

美褒が手を挙げた。

「じゃあ私も行く〜。優愛も一緒に行こうよ〜」


「え、私も行くの?……まあ、しょうがないね。一緒に行こうか」

結局、僕、優愛、美褒、そして優誓おじいちゃんの4人が車に乗ることになった。


車の前に行くと、赤いボディが光る、いかにも高級そうなオープンカーがあった。

「うわぁ……かっけー……」

思わず声が漏れる。

僕は助手席に座ることになった。

「さあ行くぞ!」

優誓おじいちゃんが声をあげる。


「そういえば、他のはとこたちは?」

優愛が聞いた。


「ああ、みんな後ろのマイクロバスに乗ってついてくるよ」


マジか。あっちの方がエアコンが効いていて涼しそう……と思ったけど、車好きの僕はこのオープンカーだけで満足だった。

今まで優誓おじいちゃんにやられてきた嫌なことは、全部これで吹っ飛んだ。


「さあ、出発だ!」

優誓おじいちゃんは勢いよくエンジンをかけ、車を発進させた。

道路に出ると、オープンカーの風が気持ちよくて、僕はそのドライブを心から楽しんだ。


でも、そのときはまだ誰も知らなかった。

この“修行”が、あんな展開になるなんて。

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