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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第七章 恋人たちの航海
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第百二十三話 君の寝息と、僕の誓い

優しい雨音に包まれて、僕らの影が、ゆっくりと、一つに重なった。

どれくらいの時間が、経っただろうか。

名残惜しそうに、ゆっくりと唇を離すと、目の前には、顔を真っ赤にして、潤んだ瞳で、僕をじっと見つめている、優愛がいた。


「……」

「……」


どちらも、何も言えない。

ただ、互いの、少しだけ速くなった呼吸の音だけが、部屋の中に、響いている。

先に沈黙を破ったのは、僕だった。


「……ごめん」

「……なんで、謝るの」

「いや、なんか……その、勢いで……」


僕が、しどろもどろでそう言うと、優愛は、ふわりと、どうしようもなく愛おしそうに、微笑んだ。

そして、僕の胸に、こつん、と、自分の額を預けてきた。


「……嬉しかった、よ」


くぐもった、でも、確かに聞こえたその声に、僕の心臓は、もう、どうしようもないくらいの幸福感で、満たされた。

僕は、そんな彼女の華奢な体を、壊れ物を扱うように、優しく、優しく、抱きしめた。

窓の外の雨音だけが、僕らの、秘密の時間を、祝福してくれているようだった。


その夜。

僕らは、結局、夕食の時間も忘れて、そのままベッドの中で、眠ってしまっていた。

夜中に、ふと目を覚ます。

隣からは、すぅすぅと、優愛の穏やかな寝息が聞こえてくる。


僕の腕の中で、安心しきったように眠る、彼女の寝顔。

月明かりが、その長いまつげの影を、白い頬の上に、そっと落としている。


(……守りたい)


心の底から、そう思った。

この、かけがえのない寝顔を。

この、僕を信じて、全てを預けてくれる、温もりを。

僕が、一生かけて、守っていくんだ。


僕は、彼女を起こさないように、そっと、その額に、唇を寄せた。

おやすみの、キス。

それは、僕が、僕自身に立てた、未来への、固い誓いだった。


翌朝。

旅行五日目の朝は、昨日までの雨が嘘だったかのように、美しい朝焼けに染まっていた。


「……ん」

僕の腕の中で、優愛が、小さく身じろぎをした。

ゆっくりと開かれた、潤んだ瞳。

そして、目の前の僕の顔を見て、はっと、昨夜の出来事を思い出したようだった。


「お、おはよう……」

「おはよう」


みるみるうちに、顔を真っ赤にして、僕の腕の中から抜け出そうとする、彼女。

でも、僕は、それを許さなかった。


「……もう少しだけ、このまま」

僕は、そう言って、彼女を、もう一度、ぎゅっと、抱きしめた。

僕の胸に顔をうずめたまま、彼女は、小さな声で「……うん」とだけ、答えてくれた。


朝日が、部屋の中を、キラキラと照らし出していく。

僕らの、忘れられない四日目の夜は、こうして、世界で一番、甘くて、幸せな朝を迎えた。

この時間が、永遠に続けばいいのに。

僕は、腕の中の温もりを感じながら、心の底から、そう願っていた。

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