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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第七章 恋人たちの航海
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第百十五話 真夜中の、秘密のディナー

ぐぅぅぅぅぅ~~~~。


静まり返ったバルコニーに響き渡った、僕の盛大な腹の虫。

それを聞いた優愛は、最初は肩をぷるぷると震わせていたが、やがて、こらえきれなくなったように、声を上げて笑い出した。


「だ、だって……ふふっ、あははは!」

「……笑うなよ。仕方ないだろ、晩ごはん、食べ損ねたんだから」

「ご、ごめん……。でも、なんか、おかしくて……」


涙を浮かべて笑う彼女の、あまりにも楽しそうな笑顔。

それを見ていたら、僕の、少しだけ恥ずかしかった気持ちも、どこかへ吹き飛んでしまった。


「……優愛だって、お腹、すいてるだろ」

「うん、まあ、少しだけ……」

そう言って、彼女は、ちらりと僕の顔を盗み見る。その目は、はっきりと「どうするの?」と語っていた。


メインダイニングは、もうとっくに閉まっている時間だ。

僕は、少しだけ考えて、部屋の中に置いてあった、一冊の分厚いファイルを開いた。


「ルームサービスとか、頼んでみるか?」

「え、でも、高いんじゃ……」

「大丈夫だろ。たぶん、おじいちゃんのツケにできるって。なんせ、これは『褒美』なんだから」

僕が、少しだけ悪戯っぽくそう言うと、優愛は「……そっか」と、納得したように、でも、どこか楽しそうに頷いた。


二人で、部屋のメニューを、頭をくっつけながら覗き込む。

「ピザがいいかな」「パスタも美味しそう!」「あ、デザートに、フルーツ盛り合わせも頼まない?」

子供みたいにはしゃぐ二人。


やがて、部屋のチャイムが鳴り、ワゴンに乗せられた、温かい料理が運ばれてきた。

僕らは、部屋にある、海の見える小さなテーブルと椅子で、二人だけの、秘密のディナーを始めた。


窓の外には、満点の星空が広がっている。

「……なんか、豪華なディナーより、こっちの方が、ずっと美味しいかも」

熱々のピザを頬張りながら、優愛が、ぽつりと言った。

「……ああ。僕も、そう思う」


僕らは、顔を見合わせて、笑い合った。

二人きりの、誰にも邪魔されない、特別な時間。

それは、どんな高級レストランのコース料理よりも、ずっと、僕らの心を満たしてくれた。


お腹がいっぱいになり、幸せな眠気に包まれる。

食べ終わった食器を片付け、ベッドに横になる。


「……おやすみ、優愛」

「……おやすみ、溢喜」


今夜はもう、背中合わせじゃない。

自然と、向かい合うようにして、眠りにつく。

そっと伸ばした僕の手に、彼女の小さな手が、優しく、重なった。

その温もりを感じながら、僕らの、忘れられない三日目の夜は、今度こそ、本当に終わりを告げた。

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