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面倒見のいい幼馴染が、今日も僕を叱る  作者: Takayu
第七章 恋人たちの航海
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第百九話 君の秘密と、僕の宝物

僕の、初めての、彼女へのクリスマスプレゼント。

その、小さな、でも、僕の全ての想いが詰まった宝物を、僕は、落とさないように、大事に、大事に、ポケットの奥にしまった。

(……そういえば、なんであのおじいさん、あんなに日本語、上手かったんだろうな……?)

まあ、観光客が多い島だから、勉強したのかもしれない。

僕は、その小さな疑問を頭の隅に追いやり、今はただ、この達成感と幸福感に浸っていた。


約束の時間が近づき、僕は、待ち合わせ場所にしていた、広場の噴水へと戻った。

すでに、優愛はそこに座って、噴水の水しぶきを、ぼんやりと眺めていた。

その手には、僕に見られないように、小さな、可愛らしい紙袋が、大事そうに握られている。


(……見つけたんだな、優愛も)


その、隠しきれていない「秘密」が、たまらなく愛おしい。

僕は、気づかれないように、そっと息を整えてから、彼女に声をかけた。


「――お待たせ」

「あ、溢喜! おかえり」


僕の姿を認めた彼女は、はっとしたように、慌てて紙袋を、自分のバッグの中に隠した。

その、あまりにも分かりやすい行動に、僕は、もう、笑いをこらえることができなかった。


「……ぷっ」

「な、何がおかしいのよ!」

「いや、別に? 何か、隠してるのかなって」

「か、隠してない!」


顔を真っ赤にして、ぷいっとそっぽを向いてしまう優愛。

その反応の一つ一つが、今はもう、僕にとっての宝物だ。


「……お腹、すかないか?」

僕がそう言って空気を変えると、優愛は「……すいた」と、少しだけ拗ねたように、でも、こくりと頷いた。


僕らは、ビーチが見える、お洒落なカフェへと向かう。

テラス席に案内されると、目の前には、エメラルドグリーンの海が、キラキラと輝いていた。


二人で、ハンモックに揺られながら、冷たいトロピカルジュースを飲む。

「……疲れた?」

「ううん。すごく、楽しい」


そう言って笑う優愛の横顔は、南国の太陽の下で、いつもより、ほんの少しだけ、大人びて見えた。

その、白い首筋で、キラリと光るもの。

それは、あの日、僕が彼女に贈った、「お守り」のブレスレットだった。

僕が贈ったものを、彼女が、この特別な旅行に、ちゃんとつけてきてくれている。

その事実が、僕の胸を、どうしようもなく、熱くした。


僕のポケットの中にも、彼女のための、新しい「お守り」が入っている。

早く、渡したい。

その気持ちが、僕の中から溢れ出しそうだった。


「……なあ、優愛」

「ん?」


「プレゼント、いつ渡すか、決めてなかったよな」

「……うん。そうだね」

「だったら、さ。明後日……クリスマスイブの夜に、交換しないか?」


僕の、少しだけ緊張した提案。

優愛は、一瞬きょとんとした後、すぐにその意味を察したようだった。

みるみるうちに、彼女の頬が、夕焼けのように、赤く染まっていく。


「……うん。いいね、それ。……約束、だよ」


か細い、でも、どうしようもなく嬉しそうな声。

その声と、照れたように俯いてしまった彼女の横顔。

それだけで、僕の心は、どうしようもないくらいの幸福感で、満たされていった。

僕らの、初めてのプレゼント交換まで、あと、二日。

その日が、待ち遠しくて、たまらなかった。

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