コミット 92:『「他人の評価」からの部分解放!教える喜びが、ニーナの自信を育む!』
エデンという具体的な目標が見えてきたことで、ニーナたちの調査と研究は、新たなフェーズへと移行した。特にニーナは、セレスティの古代魔法の知識が、エデンの謎を解き明かす上で不可欠であると考え、彼女への論理魔導の指導に、より一層力を入れるようになった。
「セレスティさん、この古代の『魔力障壁』の魔導回路、面白い構造をしてるけど、現代の技術で再現するなら、ここのエネルギー変換効率をもっと上げられるはずだ。論理魔導の『条件分岐』と『ループ処理』の考え方を使えば、もっと少ない魔力で、より強力な障壁を、しかも状況に応じて強度を自動調整できるように『プログラム』できると思うんだ」
ニーナは、セレスティが提示した古代の魔導回路図を元に、具体的な改善案を論理魔導の概念で説明していく。それは、もはや単なる知識の伝達ではなく、共に新しいものを創り上げていく「共同開発」に近いものだった。
セレスティは、ニーナの指導を受けながら、少しずつ論理魔導の真髄を理解し始めていた。最初は、ニーナのSE的な思考回路に戸惑うことも多かったが、自分の持つ古代魔法の知識が、論理魔導という新しいフレームワークによって、より洗練され、より強力な形へと昇華されていく過程は、彼女にとって大きな喜びであり、そして自信にも繋がっていった。
ある時、セレスティは、ニーナの助けを借りながら、比較的シンプルな構造の「索敵」の古代魔法を、論理魔導の考え方を取り入れて再構築し、自力で発動させることに成功した。それは、広範囲に微弱な魔力を放ち、周囲の生命体の位置や数を特定するという、高度な魔法だった。
「で、できました……!ニーナさん!古代の『千里眼の術』を、論理魔導で……私にも、使えました……!」
セレスティは、興奮と感動で声を震わせながら、その成果をニーナに報告した。彼女の瞳は、かつてないほど生き生きと輝いており、その周囲には、自信に満ちた清らかな白い魔力のオーラが、微かに立ち上っているように見えた。
ニーナは、そんなセレスティの姿を見て、心の底から温かいものが込み上げてくるのを感じていた。それは、自分が開発したシステムが完璧に動作した時のような達成感であり、そして、教え子が初めて自分の力で何かを成し遂げたのを見守る、教育者のような喜びでもあった。
「(すごいじゃないか、セレスティさん!やっぱり、あんたは天才だよ!俺が教えたのは、ほんの少しの『考え方』だけ。それをここまで自分のものにするなんて……!)」
この瞬間、ニーナは、前世で失いかけていた「他者貢献」という欲求が、別の形で満たされていくのを感じていた。それは、「他人に評価される」ことを求めるのではなく、誰かの才能を開花させる手助けをすること、そして、その成長を間近で見守ることに、純粋な喜びを見出すという、新たな自己肯定感の形だった。
セレスティは、感激した面持ちでニーナに向き直り、深々と頭を下げた。
「ニーナさん……本当に、ありがとうございます……!あなたのおかげで、私は、自分の知識が、決して無駄ではなかったことを知りました。そして、新しい魔法の可能性を……この、論理魔導という素晴らしい技術を教えていただきました。」
「いやいや、そんな大層なもんじゃないって!」
ニーナは、照れながらも、満更でもない表情を浮かべる。
セレスティが、論理魔導を部分的に理解し、簡単なロジックを体得できたことは、彼女自身の大きな成長であると同時に、ニーナにとっても、かけがえのない喜びをもたらした。それは、ニーナの「他人の評価」というクリティカルバグからの、確かな部分解放を意味していた。




