コミット 89:『ヴァローナ合流!堅物騎士団長、猫耳学者に困惑……そしてリスペクト!?』
ニーナとセレスティが古代魔法の研究に没頭していたある日、マギア・アカデミアの静かな研究室に、意外な訪問者が現れた。
「ニーナ!いるか!」
その凛とした声の主は、オーレリア王国騎士団の元団長、ヴァローナだった。彼女は、王国内で頻発する魔力流の異常現象を調査するため、少数精鋭パーティを編成すべく、そのリーダーとして、王都アウレア・シティに招聘されていたのだ。
「ヴァローナさん!?どうしてここに!?」
ニーナは、突然の再会に驚きながらも、喜びを隠せない。
「ふん、少しは驚いた顔をするようになったではないか」
ヴァローナは、相変わらずの仏頂面だったが、その瞳の奥には、微かな笑みが浮かんでいるように見えた。「お前が王都にいるという噂は聞いていた。まさか、アカデミアでこんな小娘と油を売っているとは思わなかったがな」
ヴァローナの視線が、ニーナの後ろでおどおどと隠れるようにしているセレスティに向けられる。セレスティは、屈強な女騎士の鋭い眼光に完全に怯え、猫耳をペタンと伏せてしまっている。
「あ、あの、こちらはセレスティさん。見ての通り、ちょっと人見知りなとこはあるけど、古代魔法に関しては、マジで天才的な学者なんですよ!」
ニーナは、慌ててセレスティを紹介する。
ヴァローナは、セレスティの怯えた様子と、研究室に山積みになった膨大な資料を交互に見比べ、訝しげな表情を浮かべた。「古代魔法の学者……だと?こんな子供が、本当に役に立つのか?」
その言葉に、セレスティはさらに縮こまってしまう。しかし、ニーナは臆することなく言い返した。
「失礼なこと言わないでくださいよ、ヴァローナさん!セレスティさんの知識は、本物です!先日も、王都の魔力供給が暴走した時、彼女の古代魔法の知識がなかったら、どうなっていたことか……!」
ニーナが、魔力供給システムの一件を説明すると、ヴァローナの表情がわずかに変わった。王都の魔力供給システム復旧は、王都の魔術師たちの間では大きな話題となっており、ニーナとセレスティの名前も、その際に知られることになっていたのだ。彼女は、改めてセレスティを見つめ、その小さな体に秘められた、計り知れない知識の深さを感じ取ろうとしているようだった。
「(確かに、この小娘……どこか、常人とは異なる雰囲気を持っている。あのニーナが、これほどまでに評価するのだ。あるいは、本当に何か特別なものを持っているのかもしれん……)」
その後、ニーナはヴァローナに、これまでの経緯と、セレスティとの共同研究の成果を説明した。古代魔法の解析、論理魔導との融合の試み、そして、失われた技術の再現……。ヴァローナは、最初は半信半疑だったが、ニーナが実際に古代魔法の断片を論理魔導で再現してみせたり、セレスティが古代文献の難解な記述をスラスラと解説したりするのを見て、徐々にその認識を改めていった。
「……信じられん。こんな子供が、これほどの知識を……そして、ニーナ、お前のその奇妙な術も、以前よりさらに磨きがかかっているようだな」
ヴァローナは、セレスティの才能と、ニーナの成長ぶりに、素直な驚きと、そしてほんの少しの敬意を抱き始めていた。
「実は、私も今回の魔力流異常の調査で、いくつか古代の遺物や、不可解な現象に遭遇している。お前たちの知識と技術が、その解決の糸口になるかもしれん。ちょうどパーティメンバーを探していたところなんだ。ニーナ、そして……セレスティ殿。私に力を貸してはくれまいか?」
ヴァローナのその申し出は、ニーナにとって願ってもないものだった。そして、セレスティにとっても、自分の知識をさらに大きなスケールで役立てるチャンスとなるかもしれない。
ニーナは、セレスティと顔を見合わせ、力強く頷いた。「もちろんです、ヴァローナさん!私たちにできることなら、何でも協力しますよ!」
こうして、堅物騎士団長と、ギャルSE、そして猫耳学者の奇妙なトリオは、再び運命の糸で結ばれることになる。まずは、それぞれが独自に情報収集を進め、状況を把握することから始めることになった。




