コミット 85:『徹夜続きの研究でもケロリ!?ニーナの体力にセレスティの疑惑の目!』
ニーナが試作した「古代魔法解析装置」は、セレスティの研究に革命的な進歩をもたらした。これまで数週間かかっていたような古代文献の解析作業が、数日で完了するようになり、二人の共同研究は飛躍的に加速した。
その結果、ニーナとセレスティは、文字通り寝食を忘れて研究に没頭する日々を送るようになった。研究室には、解析データが書かれた羊皮紙や、新たな魔法理論のアイデアが書き殴られたメモが散乱し、二人はカフェイン代わりの濃いお茶を啜りながら、連日連夜、古代魔法の謎と格闘していた。
「(うーん、この『探索魔法』に関する記述、理論上は成立しそうだけど、実際に魔力を流すと、術者自身にも反動で精神的な負荷が生じるリスクがあるな……セーフティロック機構をどう組み込むか……)」
「そ、そこは、古代の文献によると、『精神安定化の術式』と呼ばれる概念で、術者への反動を相殺していたという記述が……でも、その『術式』の具体的な生成方法は、完全に失われてしまっていて……」
二人の議論は、深夜まで続くことも珍しくなかった。しかし、不思議なことに、ニーナは、どれだけ徹夜作業を続けても、あまり疲れた様子を見せなかったのだ。もちろん、多少の眠気やだるさは感じるものの、翌日にはケロリとして、また元気に研究に取り組んでいる。その異常なまでの体力と回復力は、セレスティにとって、新たな疑問の種となっていた。
ある朝、三日間のほぼ完全な徹夜作業を終え、ようやく一区切りついた時のこと。セレスティは、目の下にうっすらとクマを作りながらも、どこかスッキリとした表情のニーナを見て、おずおずと尋ねた。
「あ、あの……ニーナさん……本当に、大丈夫なんですか……?ここ数日、ほとんど寝てらっしゃらないのに……その……お顔の色も、普段と変わりませんし……」
セレスティ自身は、もう限界寸前で、今にも倒れてしまいそうなほど疲労困憊だった。それだけに、ニーナのそのケロリとした様子が、信じられなかったのだ。
「ん?ああ、大丈夫大丈夫!私、昔からショートスリーパーっていうか、体力だけは無駄にある方だからさ!ギャルの体力、なめんなよーって感じ?」
ニーナは、いつもの調子で笑って誤魔化した。
「(いや、実際はSE時代の不眠不休スキルと、この世界のダークエルフとしての身体能力の合わせ技なんだろうけどな……それにしても、この身体、本当に頑丈だよな。前世の俺だったら、とっくに過労でぶっ倒れてるぞ)」
ニーナ自身も、自分の身体が持つ異常なまでのタフネスさには、薄々気づいていた。それは、単にダークエルフだからというだけでは説明がつかない、何か特別な要因があるのかもしれない、と。
セレスティは、ニーナの言葉を鵜呑みにしたわけではなかったが、それ以上追及することもできず、ただただ感心するような、あるいは少し呆れるような目で、この底なしの体力を持つギャルSEを見つめるだけだった。
「(ニーナさんって……本当に、不思議な人……ダークエルフという種族の特性だけでは、説明がつかないような……何か、特別な『何か』を、持っているような気がする……)」
セレスティの胸に生まれた小さな疑惑の種は、まだ明確な形にはなっていない。しかし、それは、ニーナという存在の特異性を、彼女が少しずつ認識し始めている証でもあった。
この徹夜続きの研究は、二人に多くの発見と、そして新たな謎をもたらしながら、さらに深まっていくのだった。




