コミット 82:『黄金都市の日常と「聖光教会」の噂!癒しの奇跡と高額な献金!?』
ニーナとセレスティの共同研究が続く中、ニーナは首都アウレア・シティでの情報収集も怠らなかった。この世界のシステム全体の不具合の手がかりや、エデンに関する情報を求めて、アカデミアの図書館に通ったり、街の様々な場所に足を運んだりしていた。
アウレア・シティは、活気に満ちた美しい都市だったが、その華やかさの影には、様々な問題や不穏な噂も潜んでいるようだった。
ある日、ニーナが街の広場で休憩していると、人々が敬虔な面持ちで一つの建物へと吸い込まれていく光景が目に入った。その建物は、白亜の美しい装飾が施された、ひときわ大きな教会だった。
「(あれは……『聖光教会』か。この国で一番大きな教会だって聞いたな。それにしても、すごい人の数だ。何か特別な行事でもあるのかな?)」
ニーナが近くにいた老婆に尋ねると、老婆はありがたそうに手を合わせながら答えた。
「ああ、あれは聖光教会の『奇跡の癒し』を求めて集まった人たちじゃよ。あそこの大神官様が執り行う儀式を受ければ、どんな難病も、どんな深い傷も、たちどころに癒されるという評判でな。じゃが、そのためには、それ相応の『献金』が必要になるんじゃがのう……」
「奇跡の癒し……ねぇ。それに、高額な献金、か」
ニーナは、その話に眉をひそめた。前世の知識では、そんな都合の良い話は、大抵の場合、何かしらの「裏」があるものだ。もちろん、この世界には魔法が存在する。しかし、どんな怪我や病も癒すという「万能の奇跡」が、そう簡単に行われていいものだろうか。そして、それが「献金」という名の対価と結びついている点も、どこか引っかかる。
「(ビジネスモデルとしては、非常に優秀だとは思うけどな……人々の不安や信仰心を利用して、高額な金銭を集める。でも、その『奇跡』の原動力は、一体何なんだろう?本当に、神の力とやらなのか?それとも……何か、トリックがあるのか?)」
ニーナのSEとしての分析眼が、その「奇跡の教会」の裏に隠されているかもしれないトリックに興味を惹かれ始めていた。もしかしたら、それは、この世界の魔力の流れに、何らかの形で不自然な介入をしている可能性も……。
「(これは、ちょっとマークしておく必要がありそうだな。下手に近づくのは危険かもしれないけど、情報だけは集めておいた方が良さそうだ)」
聖光教会。その美しい白亜の外観とは裏腹に、ニーナには、どこか不透明で、そして潜在的な「不具合」を秘めているような、そんな印象を与えたのだった。




