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コミット 7:『世界のシステム、なんか変な兆候?この胸騒ぎ、マジでデジャブなんですけど!』

論理魔導(ロジカルマジック)の実験は、相変わらず一進一退だった。爆発こそなくなったものの、魔力の矢が途中で消えたり、ありえない方向に飛んで行ったりと、成功率はまだ低い。それでも、少しずつではあるが、魔力制御のコツのようなものを掴めてきた気がする。


そんな日々を過ごしながら、私は村の生活の中で、いくつかの小さな「ん?」と思うことが増えてきた。


最初は、村の共同井戸の水だ。マーサさんが毎朝汲んでくる水が、ここ数日、どうも少し濁っている気がする。飲めないほどではないし、他の村人はまったく気にしていないようだが、私の目には、水の中にとても細かいゴミのようなものが混じっているのが「見える」気がした。


次に気づいたのは、村の畑の作物である。一部の区画で、野菜が元気がなく、葉っぱの色が薄くなっていた。日照りや水不足といった様子でもない。これも、他の村人は「まあ、そういう年もあるだろう」という感じで、特に気にする様子はなかった。


さらに極めつけは、村の家畜小屋の近くで、たまに感じる変な「もやもや」とした感覚だ。それは、空気の澱みというより、もっと根本的な魔力の流れの滞りのような感じだった。まるで、正常な情報の流れの中に、たまに邪魔な情報が混じるような、そんな気持ち悪い感覚を覚えた。


「(ん?この感じ……なんだか……)」


デジャブを感じる。既視感というやつだ。この胸騒ぎは、前世で何度も経験したものだった。


それは、システムが危険な状態に陥る数日前から、ログに出力される小さな警告の数々。あの時も、最初は誰も気にしなかった。しかし、そうした小さなサインが積み重なって、本当に取り返しのつかない大惨事を引き起こしたのだ。


「(まさか……この世界の根幹にも、何かまずいバグがあるってこと?)」


背筋に、ゾッとするものが走った。


最初は気のせいかと思っていた。私が異世界に来たばかりで、何を見ても新鮮で、だからちょっとしたことにも敏感になっているだけだと思っていたのだ。しかし、これらの小さな異変は、明らかに何かの「異常」を示唆している気がする。


「(村のおじいさんが言っていた、世界の成り立ちに関する昔話……この世界は、魔力という根本的なエネルギーが大きな流れを作っていて、その流れが止まると、天変地異や魔物が凶暴化するとか。まさか、それが関係しているのか?)」


ありえない迷信だと思っていたが、今の私には、それがただの作り話とは思えなかった。


「(井戸水の濁り、作物の元気のなさ、魔力の淀み……これらが、その『流れの歪み』のサインだとしたら?)」


もしそうなら、本当にまずい状況だ。前世の経験から言えば、小さなエラーを放置しておくと、やがてシステム全体が停止するような、最悪の事態になる可能性が高い。


「(……どうする?村の人たちに話したところで、信じてもらえるとは思えない。そもそも、私自身、まだはっきりとした証拠があるわけじゃないし)」


証拠はない。あるのは、SEとしての長年の勘と、この身体が感じ取る微妙な魔力の変化だけ。


「(でも、もし本当にまずいことの前触れだとしたら……見過ごすわけにはいかないだろう)」


たとえ勘違いだったとしても、確認しておくに越したことはない。不具合は、早く見つけて早く直すのが鉄則だから。


私は、とりあえず一番分かりやすい「作物の元気がない」ところから調べてみることにした。あの弱っている野菜が植えられている場所。あそこなら、何か手がかりが見つかるかもしれない。


胸騒ぎは、まだ全然おさまらない。この世界は、私が思っている以上に、複雑で、そして脆いシステムなのかもしれない。


最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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