コミット 68:『古代の伝説!「エデン」って……世界のバグの元凶、とかじゃないよね!?』
霧隠れの森での一件を終えたニーナは、数日後、比較的大きな宿場町「シルヴァリーフ」に到着した。洞窟での過酷なデバッグ作業の疲れを癒すため、そして新たな情報を求めて、まずは町の市場へと足を運んだ。
「(ふぅ……やっとまともな町に着いたー!とりあえず、美味い飯と、情報収集だな!)」
シルヴァリーフの市場は、様々な地方からの品物や人々で賑わっており、活気に満ち溢れていた。香辛料の香り、鍛冶屋の槌音、商人たちの威勢の良い呼び込みの声。ニーナは、久しぶりの喧騒に、少しだけ心が浮き立つような気分だった。
屋台で買った焼き串を頬張りながら、ニーナは市場の露店を冷やかして回る。武器屋、防具屋、薬草屋、そして怪しげな骨董品を扱う店。様々な品物を見て回るだけでも、この世界の文化や技術レベルが垣間見えて面白い。
「(この世界の武具って、やっぱり魔力伝導率とかが重要なんだろうな……エレメンタル・ガードナーみたいな高性能なデバイスは、そうそう手に入らないだろうし)」
そんなことを考えながら歩いていると、一軒の古本屋が目に留まった。店先には、埃をかぶった古い書物や羊皮紙の巻物が山積みになっている。
「(古本屋か……もしかしたら、何か面白い情報が眠ってるかもしれないな)」
ニーナは、店主の老人に声をかけ、何かこの地域の伝説や、古い歴史に関する書物はないかと尋ねてみた。
老店主は、しばらく書棚を漁っていたが、やがて一冊の古びた革綴じの本をニーナに差し出した。
「これなんぞはいかがかな?この地方に古くから伝わる『エデンの聖域』に関する記述が、わずかばかりじゃが残っておるはずじゃ」
「(エデン……?初めて聞く名前だな。聖域、か……なんだか、すごい場所っぽい響きだ)」
ニーナは、興味をそそられ、その本を受け取った。
本を開くと、そこには霞んだ文字で、エデンに関する断片的な記述が記されていた。
『――世界の果て、クロノスの森の奥深く、人跡未踏の地に、聖域エデンは存在する。そこは、いにしえの賢者たちが築いた理想郷であり、大いなる知識と力が眠ると言われる。しかし、エデンへの道は険しく、多くの試練が待ち受ける。そして、聖域の門は、選ばれし者、あるいは大いなる厄災の時にのみ開かれるという――』
「(世界の果て……クロノスの森……選ばれし者、か。ずいぶんと大層な伝説だな。でも、具体的な場所とか、そこへ行く方法は、これだけじゃ全然分からないな……)」
ニーナが本を読んでいると、古本屋の店主が話しかけてきた。「エデンは、あくまで伝説じゃ。じゃが、この乱れた世の中じゃ、そういった伝説にすがりたくなる者の気持ちも分かるがのう」
「乱れた世の中、ですか?」
「うむ。最近、どうもおかしなことが多いからのう。天候は不順じゃし、凶暴な魔物も増えた。古き者たちは、世界の『均衡』が崩れ始めておるのではないかと、もっぱらの噂じゃ」
「(世界の均衡の崩壊……か。やっぱり、俺が感じてるシステムの不具合と、何か関係があるのかもしれないな)」
ニーナは、店主に礼を言い、その古本を買い取った。エデンという言葉が、妙に心に引っかかる。それは、この世界の謎を解き明かすための、重要なキーワードになるのかもしれない。
市場の喧騒の中で、ニーナは手に入れたばかりの古本をパラパラとめくりながら、エデンという未知の聖域に思いを馳せるのだった。
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