コミット 65:『暴走魔石の外殻破壊!「破砕纏衣《インパクト・エンチャント》」発動!?』
洞窟最深部、暴走する「魔石集積体」を前に、ニーナはどう対処すべきか思案していた。魔石から溢れ出す制御不能な魔力は、周囲の空間を歪ませ、その魔力によって形成されたと思われるガラス質の硬い外殻が、まるで盾のように魔石本体を守っている。この外殻は、魔石から供給される魔力で常に自己修復しているようで、破壊は容易ではなさそうだった。
「(このガラス質の外殻、かなり厄介だな……並の攻撃じゃ、びくともしそうにない。かといって、下手に刺激して魔石が大爆発でもしたら、この洞窟ごと吹っ飛んじまうぞ……)」
ニーナは、まずエレメンタル・ガードナーの補助を受けつつ、自身の魔力感知能力を使い、魔石集積体の構造と外殻の特性を分析しようと試みた。
「(なるほど……この外殻、魔石から供給される魔力で常に自己修復してるタイプか。つまり、修復速度を上回るダメージを連続で与えるか、あるいは外殻の魔力供給源である魔石本体の機能を一時的にでも止めないと、突破は難しいな……)」
SEとしての分析眼が、攻略の糸口を見つけ出す。しかし、問題はどうやってそれを実行するかだ。
「(魔石本体に直接干渉するのはリスクが高すぎる……となると、まずはあの外殻をどうにかしないと……でも、遠距離から炎の術とかで攻撃したら、勢い余って中の魔石までダメージ与えかねないよな……それは避けたい)」
そこで、ニーナの脳裏に、あるアイデアが閃いた。
「(そうだ、エレメンタル・ガードナーのガントレットに魔力を凝縮させて、直接物理的な衝撃として叩き込むのはどうだ……?これなら、衝撃の深さをある程度コントロールできるかもしれないし、外殻だけを効率的に破壊できるかもしれない……!)」
それは、魔法使いというより格闘家のような荒業だが、背に腹は代えられない。
「(ターゲット、外殻の一点!そこに連続で衝撃を加えて、亀裂を入れる!この技、今日がぶっつけ本番だけど、やるしかない!)」
ニーナは、深呼吸一つし、右手のガントレットに炎の魔力を最大限に集中させる。そして、ガラス質の外殻の一点を目がけて、渾身の力で拳を叩き込んだ!
ドゴォォン!!!
ガントレットから放たれた衝撃波が、外殻に激突し、激しい火花を散らす。外殻はびくともしないように見えたが、ニーナは諦めない。
「(まだまだ!SEのデバッグは、根気と試行回数が命なんだよ!)」
ニーナは、何度も何度も、同じ場所に衝撃波を叩き込み続ける。その度に、洞窟全体が振動し、ニーナの腕にも強烈な反動が襲いかかる。
「(くっ……!さすがに、SEの仕事の範疇を完全に超えてるって、これ!でも、ここで諦めたら、不具合は修正できないんだ!)」
そして、数十発目の衝撃波が叩き込まれた瞬間、ついにガラス質の外殻に、蜘蛛の巣のような亀裂が走った!
「(よし、効いてる!あと一息!)」
ニーナは、最後の力を振り絞り、最大出力の衝撃波を亀裂の中心へと叩き込んだ!
バキィィィィィン!!!
甲高い音と共に、ガラス質の外殻が砕け散った。
「(やった……!外殻破壊!あとは、あの暴走してる魔石集積体本体をどうにかするだけだ……!)」
しかし、外殻を破壊したことで、魔石集積体から溢れ出す魔力の奔流が、さらに勢いを増してニーナに襲いかかってくる。
「(うわっ、暴走が加速してる!?まずい、このままじゃ押し潰される!)」
絶体絶命のピンチ。その時、ニーナの脳裏に、ある考えが浮かんだ。
「(そうだ、この魔石が人為的に設置されたものなら、その『制御システム』自体にアクセスできれば、暴走を止められるかもしれない……!あの表面の亀裂……そこから内部の魔導回路に、俺の術で直接『命令』を送り込む!)」
それは、極めて高度な魔力制御と、精密なハッキング技術を必要とする、まさに荒業中の荒業だった。この技を、ニーナは「破砕纏衣」と名付けることにした。
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