コミット 63:『霧の晴れ間に見えた「洞窟」!これって、ただの罠じゃなくない!?』
幽霊魔物をなんとか撃退したニーナ。しかし、森の奥から漂ってくる異常な魔力の気配は、まだ消えていなかった。むしろ、先程の魔物は、この森の異常が生み出した「現象」の一つに過ぎないのではないか、そんな予感がニーナの胸をよぎる。
「(一体、この森の奥に何があるっていうんだろ……?もしかして、ここ全体が巨大な不具合の塊になってるとか?)」
好奇心と、そしてSEとしての問題解決への欲求が、ニーナをさらに森の奥へと突き動かした。幸い、先程の戦闘でエレメンタル・ガードナーの使い方のコツを少し掴めたので、以前よりは精神的な余裕も生まれていた。
霧は依然として深いが、ニーナは魔力の流れを頼りに、慎重に進んでいく。すると、不意に、前方の霧がわずかに薄れ、岩肌にぽっかりと口を開けた洞窟の入り口が見えた。その洞窟の奥からは、先程の幽霊魔物を生み出したのと同じ、不安定で禍々しい魔力が、まるで呼吸するかのように漏れ出してきている。
「(……洞窟か。いかにも何かありそうな雰囲気だな。普通のRPGなら、奥にボスキャラでもいそうだけど……この世界のシステムじゃ、何が飛び出してくるか分かったもんじゃない)」
ニーナは、洞窟の入り口で足を止め、周囲を警戒した。もし、この洞窟が世界の歪みの発生源だとしたら、内部は相当危険な状態になっている可能性がある。
「(好奇心は猫をも殺すって言うしな……でも、SEとしては、原因を特定しないと気が済まないんだよな……)」
ニーナが洞窟の入り口を慎重に調べていると、足元の苔むした岩に気づかず、バランスを崩してしまった。
「うわっ!?」
咄嗟に体勢を立て直そうとしたが、運悪く、そこは急な下り坂になっており、ニーナはそのままズルズルと洞窟の奥へと滑り落ちてしまった。
「ちょっ……マジかよー!こんな古典的なトラップ(?)に引っかかるとは……!」
幸い、怪我はなかったが、薄暗く湿った洞窟の底に一人取り残されてしまった。振り返ると、滑り落ちてきた斜面は意外と急で、簡単には登れそうにない。
「(はぁ……完全に想定外の展開だな、これは。こうなったら、この洞窟を調査して、別の出口を探すしかないか……)」
ニーナはため息をつき、エレメンタル・ガードナーをガントレット形態にし、右手に炎の魔力を灯して周囲を照らした。洞窟の内部は、自然にできたものとは思えないほど、奇妙に歪んだ構造をしていた。壁は滑らかに削られているかと思えば、突然鋭く尖っていたり、通路はありえない角度で曲がりくねっていたりする。そして、洞窟全体が、不安定な魔力で満たされており、時折、空間が微妙に揺らぐような感覚さえあった。
「(この洞窟、明らかに魔力の流れがおかしいな……まるで、どこかで魔力が堰き止められて、無理やり別の場所に流れ込もうとしてるみたいだ。その影響で、空間自体も不安定になってるのか……?)」
ニーナは、炎の明かりを頼りに、慎重に洞窟の奥へと進んでいく。途中、何度か幽霊魔物のような存在に遭遇したが、先程の経験を活かし、的確に撃退していく。
この洞窟の最深部に何があるのか。そして、無事に脱出することはできるのか。ニーナの新たなデバッグ作業が、薄暗い洞窟の中で静かに始まった。
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