コミット 60:『論理と経験則、一時的アライアンス!次なる問題は……もっとヤバそう!?』
ヴァローナ率いる騎士団に別れを告げ、再び一人旅に戻ったニーナ。彼女の足取りは、以前よりも幾分か軽快だった。それは、単に荷物が軽くなったからというわけではなく、騎士団での経験が彼女に精神的な成長をもたらしたからだろう。特に、ヴァローナという、自分とは全く異なる価値観を持つ人間と出会い、衝突し、そして最終的には互いを認め合うことができた経験は、ニーナにとって非常に大きなものだった。
「(ヴァローナさんとの連携……あれは、まさに論理と経験則の一時的なアライアンスって感じだったな。最初は、お互いのやり方が違いすぎて、どうなることかと思ったけど……)」
ニーナは、旅の途中、ヴァローナとの共闘を思い出していた。ヴァローナの長年の経験則に基づく直感的な判断力と、ニーナのSE的思考による論理的な分析力。それらが奇跡的に噛み合った時、かつてないほどの力が生まれた。それは、どちらか一方が優れているというわけではなく、異なる二つの要素が補い合うことで、より高次元のパフォーマンスを発揮できるという、システム開発における「チームワークの重要性」を再認識させる経験でもあった。
「(まあ、あの石頭団長の『経験則至上主義』は、まだまだアップデートの余地ありまくりだったけどな!でも、最後はちゃんと俺の『論理的な考え方』の有効性も認めてくれたし、大きな進歩だ!)」
ニーナは、一人でニヤニヤしながら、そんなことを考えていた。ヴァローナとの出会いは、ニーナ自身の「他人の評価」に対する問題点を修正する上でも、大きな転機となった。これまでは、他人の評価を恐れるあまり、自分を押し殺したり、逆に過剰にギャルを演じたりすることが多かった。しかし、ヴァローナという厳格だが公平な評価者を得て、自分の能力を正当に評価される経験をしたことで、ニーナは少しずつ自分に自信を持てるようになっていた。
「(世界の不具合は、まだまだ山積みっぽいけど……今の俺なら、何とかなる気がする!)」
そんな前向きな気持ちで街道を進んでいたニーナだったが、数日後、立ち寄った小さな村で、またしても不穏な噂を耳にすることになる。
「最近、この先の森で、奇妙な魔物が出るらしいんだよ。なんでも、姿形が不安定で、まるで実体がないみたいにユラユラしてるとか……」
「ああ、聞いたことあるぜ。何人かの腕利きの冒険者も、そいつに手こずってるらしい。普通の武器じゃ、なかなかダメージを与えられないって話だ」
「(姿形が不安定な魔物……?実体がないみたい……?それって、もしかして……)」
ニーナの脳裏に、嫌な予感がよぎる。それは、まるでプログラムのデータが破損して、正常なグラフィック表示ができなくなっているような状態、あるいは、ネットワークの同期ズレで、キャラクターの位置情報が不安定になっているような状況を彷彿とさせた。
「(こ、これって、もしかして……『世界のシステムの不具合』に関係あるんじゃないか……?以前のオオカミ型魔物よりも、もっと根本的な部分でエラーが発生してるんじゃ……?)」
ニーナの瞳に、強い警戒の色と、世界のシステムに関わるかもしれない不具合への、SEとしての強い探求心が宿る。
「(これは……調査してみる価値、ありそうだな。次の不具合は……今まで以上に、ヤバそうな予感がするけど……!)」
ヴァローナとの出会いで得た経験と、世界の不具合の根深さを改めて胸に刻み、ニーナは、その「奇妙な魔物」が出ると噂される森へと、慎重に足を踏み入れていくのだった。彼女の新たなデバッグアドベンチャーは、休む間もなく、次のステージへと進もうとしていた。
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