コミット 6:『身体計測(リアル)。Fカップって、このありえない見た目は無視できないってマジで!』
爆発四散した赤い石ころの後始末 (ってほどでもないけど)を終え、私はトボトボと村への帰り道についた。顔や手についた煤を近くの小川で洗い流したが、服についた焦げ跡はマジどうしようもない。幸い、怪我らしい怪我はなかったのが不幸中の幸いってことで。
村に戻ると、ゴードン村長の奥さんであるマーサさんが、私の姿を見て目を丸くした。
「まあ、ニーナちゃん! いったいどうしたんだい、そんな煤だらけになって!」
「あ、えっと……ちょっち、火の番してたら、まさかの大失敗しちゃって……あはは」
ありえない言い訳。まさか「魔法の実験で自爆しました」なんて言えるわけないじゃん。マーサさんはマジ心配そうな顔で、「火傷はないかい? 大丈夫かい?」と私の身体をあちこち確認してくる。その優しさが、今の私にはちょっぴり沁みた。
「お風呂を沸かしてあげるから、しっかり温まってきなさい。着替えも用意しておくからね」
マーサさんの言葉に甘え、私は村の共同浴場(って言っても、大きな樽にお湯を張っただけのシンプルなやつだけど)を使わせてもらうことになった。
一人きりになった湯船で、私は改めて自分の身体と向き合うことになった。湯気でぼやけた水面に映る、銀髪褐色肌の肢体。それはマジで絶世の美少女のものであり、三十八歳のおっさんSEだった頃の自分とは、もはやマジで何の共通点も見当たらない。
そして、やっぱり気になるのは、この胸。
「(……でっか。何度見ても、ありえないグラフィックだわ)」
おそるおそる、その豊満な双丘に手を伸ばす。柔らかくて、それでいて確かな弾力。お湯に濡れた肌はツルツルで、自分のものでありながら、なんか他人の身体を触ってるみたいな、そんな変な感覚に襲われる。
「(これが……Fカップ……。前世じゃ、画像とか動画でしかお目にかかれなかったレアアイテムじゃん。それが今、自分の身体に標準搭載されてるってんだから、世の中マジで何が起こるか分かんない)」
冷静に分析しようとすればするほど、その存在感に圧倒される。邪魔だし、重い、と感じる一方で、この身体が持つある種の「力」みたいなものも、無視できなかった。村の男たちの、あの熱い視線。あれは絶対、この外見、特にこの胸に向けられたものだよね。
「(……使い方次第じゃ、最強のユーザーインターフェースかもしんねぇしな、これ)」
ポツリと、そんな考えが浮かぶ。システムエンジニアとして、見た目の重要性は骨身に染みてる。どんなに高性能なシステムも、操作画面がイケてなかったらユーザーには受け入れられない。逆に、多少性能に難があっても、魅力的な見た目なら、多くの人を惹きつけることができる。
このギャルボディ、特にこのFカップは、ある意味で究極の見た目と言えるのかもしれない。 少なくとも、男に対してはマジで効果絶大だろう。
「(……いやいや、何考えてんだ、俺は! こんな見た目で男を釣ろうってのか? SEとしてのプライドはどうした!)」
ブンブンと頭を振って、ヤバい考えを追い払う。だが、一度意識してしまった「可能性」は、なかなか頭から離れてくれない。
「(でもまあ、情報収集とか、交渉とか……そういう場面では、有利に働く可能性も……マジでないとは言えない……かも?)」
結局、私は結論を出せないまま、のぼせる寸前までお湯に浸かっていた。
風呂から上がると、マーサさんが用意してくれたシンプルなワンピースに着替える。村の女性が着るような、飾り気のない服だ。それでも、この身体が着ると、なぜか様になってしまうのが不思議だ。
「ニーナちゃん、さっぱりしたかい?」
「はい、おかげさまで。ありがとうございました」
「それにしても、本当に綺麗な髪の色だねぇ。肌も、まるで磨いたみたいにツヤツヤで」
マーサさんは、何の気なしに私の髪や肌を褒めてくれる。その言葉に、私はどう反応していいか分からず、曖昧に笑うしかなかった。
「(他人の評価……。やっぱり、気になるもんは気になるんだよな……)」
前世では、上司やクライアントからの評価だけが、自分の価値を測る唯一の指標だった。この世界に来て、その呪縛から解放されたはずなのに、やっぱり心のどこかで、他人からどう見られているのかを気にしている自分がいる。
この身体は、仕様変更による意図しない結果なのか、それとも新たな可能性を秘めた最高の見た目なのか。そして、この心に巣食う「他人の評価」という名のバグは、いつになったら修正できるのだろうか。
そんなことを考えながら、私はマーサさんが用意してくれた温かいスープを、ゆっくりと啜るのだった。
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