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【完結保証】『ギャルエルフ』になった社畜SEの俺、転生先が『バグだらけの世界』だったので『デバッグ』することになりました!――ギャルSEの異世界デバッグ!  作者: AKINA
フィーチャー2:『騎士団長と謎の魔物!?~論理と経験則の衝突、そして協調~』

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コミット 53:『「失敗はバグじゃない、改善のためのログだ!」ギャルSEの熱血問題解決説法!?』

作戦会議室の重苦しい空気は、ヴァローナの決断の遅延によって、さらに澱みを増していた。騎士たちは、団長の次の言葉を固唾を飲んで見守っているが、ヴァローナは依然として苦悩の表情で押し黙ったままだ。


「(ダメだこりゃ……このままじゃ、ヴァローナさん、完全に思考停止してる。誰かが背中を押してあげないと……いや、ここはひとつ、俺が発破をかけるしかないか……?) 」


ニーナは、もう我慢の限界だった。この石頭で融通の利かない女騎士団長の「心の壁」を、何とかしてこじ開けなければならない。


「――ねぇ、ヴァローナさん!」


ニーナは、思い切って声を張り上げた。その場違いなほど明るい声に、騎士たちの視線が一斉に集まる。ヴァローナも、驚いたように顔を上げた。


「いつまでウジウジしてるんですか! 確かに、過去に大きな失敗をしてしまったことは消せないかもしれない。でもね、それって別に『もう終わり』ってわけじゃないでしょ!? むしろ、その経験から何を学んで、次にどう活かすかが大事なんじゃないの!?」


ニーナの言葉は、まるでマシンガンのように繰り出された。その瞳には、強い意志の光が宿っている。


「物事ってのはさ、どんなに注意深く準備したって、予期せぬ問題が起きるもんなんだよ! でも、それは別に誰かが無能ってわけじゃない。むしろ、問題が起きたってことは、そこを直せばもっと良くなるチャンスだってこと! 失敗は、ただの失敗じゃない。『次にもっと上手くやるための、大事な教訓』なんだよ!」


ニーナの熱弁は続く。前世で、何度も何度も繰り返してきた問題解決。その度に味わった絶望と、そしてそれを乗り越えた時の達成感。その経験が、彼女の言葉に力を与えていた。


「『失われた砦』でのこと、引きずってるのは分かる。仲間を失った悲しみも、自分の判断への後悔も、簡単には消えないことだって分かる。でもさ、だからって、新しい一歩を踏み出すのを怖がってたら、何も変わらないじゃん! あの時の教訓を胸に刻んで、同じ過ちを繰り返さないための工夫をして、次に進む! それが、前に進むってことでしょ! ヴァローナさんがやらなきゃ、誰がやるんだよ!」


ヴァローナは、ニーナの言葉を、ただ黙って聞いていた。その金色の瞳は、大きく見開かれ、様々な感情が複雑に交錯しているように見えた。怒り、戸惑い、そして、ほんの僅かな……希望?


「ヴァローナさんには、守るべきものがあるんでしょ? この騎士団の仲間たち、そして、この地域で暮らしてる人たちの生活。過去の失敗に囚われて、今、目の前にある危機から目をそらすなんて、それこそが一番の問題なんじゃないの!?」


ニーナの言葉は、ヴァローナの心の最も柔らかい部分を、しかし的確に抉った。彼女の瞳から、強い意志の光が放たれ、それがまるでヴァローナの心の奥底に巣食う迷いやトラウマという名の闇を打ち消すかのように、会議室全体を照らし出す。


その時、これまで黙って成り行きを見守っていたギデオンが、静かに口を開いた。


「……団長。あの小娘……いや、ニーナ殿の言う通りかもしれません。過去は過去。我々が今為すべきは、未来を良くするために、現在、最善を尽くすことではありますまいか」


ギデオンの言葉に、他の騎士たちも次々と同調の声を上げ始めた。


「そうだぜ、団長! 俺たちは、あんたを信じてる!」

「団長の指示なら、どんな危険な任務だって、喜んで!」

「俺たちも、あの時の悲劇を繰り返したくない。だからこそ、今、立ち向かうべきだ!」


部下たちの熱い言葉。それは、ヴァローナが「失われた砦」で失ったと信じていた、「仲間からの信頼」という、かけがえのないものだった。彼女は、自分が一人で全てを背負い込み、過去の失敗に囚われていたことに、改めて気づかされた。


ヴァローナの瞳から、一筋の涙がこぼれ落ちた。しかし、それは以前のような絶望の涙ではない。後悔と、そして新たな決意が入り混じった、温かい涙だった。


「……みんな……すまない。私が……間違っていたようだ」


ヴァローナは、ゆっくりと顔を上げ、騎士たちの顔を見回した。そして、最後にニーナに向き直り、深々と頭を下げた。


「ニーナ殿……感謝する。貴殿の言葉で、目が覚めた。私は……騎士団長として、あまりにも未熟だった」


その瞬間、ヴァローナを長年縛り付けていた「思考の硬直化」という名の心の壁に、決定的な亀裂が入ったのを、ニーナは確かに感じ取った。彼女の周囲を覆っていた硬直した魔力の流れが、まるで雪解け水のように、サラサラと解け始め、清浄な赤い光が溢れ出してくるのが見えた。


「(よし……!心の壁の解体、第一段階、完了……ってとこかな!?) 」


ニーナは、心の中でガッツポーズを決めながら、ヴァローナに力強く頷き返した。

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