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『ギャルエルフ』になった社畜SEの俺、転生先が『バグだらけの世界』だったので『デバッグ』することになりました!――ギャルSEの異世界デバッグ!  作者: AKINA
フィーチャー2:『騎士団長と謎の魔物!?~論理と経験則の衝突、そして協調~』

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コミット 50:『駐屯地での小さな「事件」!?ニーナのロジックとヴァローナの決断が試される?』

ニーナが騎士団の駐屯地で過ごすようになってから、二週間ほどが経過した頃。駐屯地内で、些細だが奇妙な「事件」が立て続けに発生した。最初は、訓練用の木剣や矢といった備品が数本紛失するという程度のものだった。しかし、数日後には、薬草庫に保管されていた比較的高価な回復薬がいくつか無くなっているのが発見され、さらには、騎士団の巡回ルートや兵力配置が記された簡易な地図の一部が、何者かによって盗み見られたような形跡まで見つかったのだ。


「(うーん、これは単なる管理不行き届きじゃ済まないレベルだな……内部犯か、あるいは外部の盗賊の(たぐい)か……?) 」


ニーナは、SE時代に培った問題解決能力を活かして、独自の調査を開始した。


ヴァローナは、この一連の事件に対し、騎士団長として厳しい表情で臨んでいた。「断じて許せん。騎士団の規律を乱し、機密を漏洩せんとする輩は、必ず見つけ出し、厳罰に処す!」


彼女は、持ち前の経験則から、過去の同様の事例(例えば、不満を持つ兵士によるサボタージュや、敵対勢力による諜報活動など)を参考に、容疑者の洗い出しと尋問を開始した。しかし、どの騎士も固く口を閉ざし、決定的な証拠は一向に掴めない。ヴァローナの捜査は、次第に焦りと苛立ちの色を帯びていく。


「(ヴァローナさんのやり方じゃ、(らち)が明かないな……経験則に頼りすぎると、先入観で視野が狭くなってしまうんだよな。こういう時は、もっと客観的なデータと論理でアプローチしないと) 」


ニーナは、ヴァローナとは別に、事件に関する情報を集め、分析を進めていた。


盗まれた備品の種類と量:生活必需品ではなく、換金性の高いものや、特定の目的(例えば、治療)に使われるものが多い。

犯行が行われたと思われる時間帯:警備が手薄になる深夜や、訓練で多くの騎士が持ち場を離れている時間帯に集中している。

盗み見られた地図の内容:機密レベルはそれほど高くないが、特定の地域の警備状況が分かるもの。


これらの状況証拠をパズルのピースのように組み合わせ、ニーナは論理的な推理を組み立てていく。


「(犯人は、おそらく内部の人間。それも、金に困っているか、あるいは誰かを助けるために必死になっている人物……そして、地図の情報は、おそらく換金目的ではなく、その『誰か』を安全に駐屯地の外へ連れ出すため、あるいは外部から何かを『持ち込む』ための下準備……?) 」


ニーナの脳内では、様々な可能性の分岐が光の線で結びつき、矛盾点や確率の低い容疑者が除外されていく。そして、最終的に、ある一人の若い騎士の姿がハイライトされた。それは、普段は目立たない、少し気弱そうな印象の補給係の青年だった。


ニーナは、自分の推理をヴァローナに伝えるべきか悩んだ。ヴァローナの考え方の硬さを考えれば、また「小娘の憶測」と一蹴される可能性が高い。しかし、このままでは無実の騎士まで疑われかねないし、何より、真犯人が追い詰められて、さらに大きな問題を引き起こすかもしれない。


意を決したニーナは、ヴァローナの執務室を訪れ、自分の推理を伝えた。


「ヴァローナさん、今回の事件の犯人、もしかしたら補給係のライルさんかもしれません」


「ライルだと?馬鹿な、あのような気弱な男が、そのような大胆な犯行を……?何の根拠があってそう言うのだ!」


ヴァローナは、案の定、強い口調で反論した。


ニーナは、臆することなく、集めた状況証拠と、そこから導き出される論理的な結論を、一つ一つ丁寧に説明した。ライルが最近、故郷の妹の病気で多額の金が必要になっていること。彼が薬草庫の管理を担当しており、深夜に一人で倉庫にいる姿が目撃されていること。そして、盗み見られた地図が、駐屯地から彼の故郷の村へ向かう最短ルートを示していたこと。


ヴァローナは、最初は半信半疑だったが、ニーナの冷静で論理的な説明を聞くうちに、徐々にその表情を険しくしていった。ニーナの指摘する事実は、確かに彼女の経験則では見抜けなかった点ばかりだった。


「……だが、それが真実だとして、なぜライルは我々に相談しなかったのだ。騎士団には、相互扶助の精神があるはずだ」


「それは……もしかしたら、彼が手に入れようとしていた薬が、普通の薬じゃないからかもしれません。最近、騎士たちの間で噂になっている『奇跡の教会』ってありますよね?もしかしたら、ライルさんの妹さんの病気は、そこの『高価な薬』じゃないと治らないとか……そして、その薬を手に入れるためには、騎士団に迷惑をかけられないと思ったとか……」


ニーナは、以前耳にした教会の噂を結びつけて推測した。


ヴァローナは、ニーナの言葉にハッとした表情を浮かべた。確かに、あの教会の噂は彼女も耳にしていた。そして、ライルの故郷の村が、その教会の勢力範囲に近いことも。


結局、ヴァローナはニーナの推理に基づき、ライルに事情を聞くことにした。そして、全てはニーナの推測通りだった。ライルは、妹の難病を治すために、法外な値段で取引されるという「奇跡の薬」を手に入れようと、騎士団の備品を盗んで換金し、さらにその薬を秘密裏に村へ運ぶために地図の情報を必要としていたのだった。


この一件は、ヴァローナに大きな衝撃を与えた。自分の経験則だけでは、事件の真相に辿り着けなかったこと。そして、ニーナの論理的な思考が、自分では見抜けなかった「動機」や「背景」を明らかにしたこと。それは、彼女の「考え方の硬さ」という悪いところに、再び小さな、しかし確実な亀裂を入れる出来事となった。


そしてニーナもまた、この事件を通じて、論理だけでは解決できない「人の想い」というものの複雑さを改めて感じると同時に、自分の力が、誰かを救うためにも使えるのだという、新たな可能性を見出したのだった。

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