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コミット 5:『試作魔法「炎の矢(仮)」生成!……って、なんで爆発!?技術的な報告にギャル語はマジ勘弁!』

魔力コントロールの難しさに直面したものの、私は諦めなかった。SEにとって、最初の不具合は想定内。むしろ、ここからが腕の見せ所だ。


「(問題は、思考と魔力の連携だな。イメージが曖昧なのか、あるいは魔力への指示に余計なものが混じってるのか……)」


私は前世でシステムトラブルの原因を特定する時のように、冷静に(あくまで内心では)分析を進める。そして、一つの仮説に至った。


「(もしかして、一度に複雑な命令を送りすぎなのか? まずはもっと単純な……そう、魔力を一点に『集める』ことだけに集中してみよう)」


人間の脳だって、同時に色々なことをするのは得意じゃない。ましてや、未知のエネルギーである魔力を、生まれたばかりのこの身体で操ろうというのだ。段階的に。基本に戻ることが重要だ。


再び赤い石ころに向き合う。今度は、余計な思考を極力排除し、ただ一点、「魔力よ、この石の中心に集まれ。そして、鋭い形を取れ」とだけ念じる。まるで、データベースに単純なデータ抽出命令を出すような、そんな心境で。


集中。


自分の体内から流れ出す魔力の光の線を、今度こそ逃さない。それを、石ころの中心へと、ゆっくりと、だが確実に導いていく。光の線は、まだ細く頼りないが、以前のように途中で消えたりはしない。一本の、明確な意志を持った光が、石へと吸い込まれていく。


「(……いける!)」


確かな手応えを感じた。石ころの内部で、魔力が徐々に密度を増していくのが「見える」。光の線が、まるで細いドリルのように、石の中心で渦を巻き、凝縮していく。


「(よし、もう少しだ! このまま、先端を尖らせて……!)」


イメージは、一本の矢。炎の矢、とまではいかなくても、少なくとも狙いを定められるエネルギーの塊。


そして、ついに石ころの表面から、凝縮された魔力の一部が、鋭い先端となって顔を覗かせた。それはまだ不格好で、安定しているとは言い難いが、確かに「形」を成していた。一本の、光り輝く矢のようなものが、石から数センチほど突き出ている。


「(やった……! 試作品、完成だ!)」


思わずガッツポーズが出そうになるのを堪える。SEにとって、自分の作ったプログラムが初めて意図通りに動いた瞬間の感動は、何物にも代えがたい。それが、異世界での魔法という形で再現されようとは。


「(あとは、これを『発射』するだけだ! 目標、前方のあの木! いけぇーっ! ファイヤー! ……って、ノリで叫んじゃったけど、思考による指示は正確に送らないと!)」


最後の仕上げに、私は脳内で「発射!」と明確な命令を送った。同時に、ギャルっぽいノリで景気づけに「ファイヤー!」と叫んでしまったのは、完全に無意識の産物だった。


瞬間。


ボムッ!!!


「へぶっ!?」


石ころが、私の目の前で派手な音を立てて爆発した。いや、爆発というよりは、破裂に近い。幸い、威力は大したことがなく、顔に破片が数個当たって軽い衝撃があった程度だが、それよりも精神的なショックが大きい。


「な、なんでだよ!? あと一歩だったじゃん!?」


私は呆然と、黒く焦げた石ころの残骸を見つめる。顔には煤がつき、髪の毛も少しチリチリになっているかもしれない。せっかくの美少女ギャルボディが台無しだ。


「(あ、これ、出力が許容量を超えた的なやつか? それとも、最後の『ファイヤー!』が悪かったのか? あの思考による指示に、余計な情報が付与された可能性が……?)」


冷静に(なろうと努力しながら)原因を分析する。おそらく、魔力を一点に集中させすぎたことによるエネルギーの暴走、もしくは、発射の際の出力調整ミスだろう。最後の最後で、余計な「ギャル的感嘆詞」という不要なデータが混入し、コマンドが正しく解釈されなかった可能性も否定できない。


「(……技術的な報告に『マジヤバくない?』みたいなのは、絶対やめよう、こりゃ)」


私は、一つ大きなため息をつくと、煤だらけの手で顔を拭った。


初めての論理魔導(ロジカルマジック)は、見事に(?)爆発四散という結果に終わった。だが、確かな手応えもあった。魔力を「形にする」ことはできたのだ。あとは、その制御と出力を安定させるだけ。


「(道のりは長そうだけど……面白くなってきたじゃないか!)」


SE魂は、ますます燃え上がるのだった。


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