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【完結保証】『ギャルエルフ』になった社畜SEの俺、転生先が『バグだらけの世界』だったので『デバッグ』することになりました!――ギャルSEの異世界デバッグ!  作者: AKINA
フィーチャー2:『騎士団長と謎の魔物!?~論理と経験則の衝突、そして協調~』

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コミット 42:『ヴァローナの「経験則」データ拝見!……その戦術、何年前のやり方ですか?』

翌朝、ニーナは鶏鳴(けいめい)よりも早い騎士たちの鬨の声で叩き起こされた。寝不足の頭でぼんやりと窓の外を眺めていると、ヴァローナが訓練場で騎士たちに戦術指導を行っているのが見えた。興味を惹かれたニーナは、そっと訓練場の隅へ行き、その様子を見学することにした。


ヴァローナは、地面に即席の戦術図を描きながら、熱弁を振るっていた。


「いいか、諸君!魔物の群れと遭遇した場合の基本陣形は、これだ!まず、盾兵を前面に展開し、敵の突進を食い止める。その間に、槍兵が側面から敵の体勢を崩し、弓兵が後方から確実に数を減らす!これが、長年我が騎士団が培ってきた、最も効率的で損害の少ない戦術だ!」


彼女が示す戦術図は、確かに洗練されているように見えた。古風ではあるが、力強い光のラインで描かれたそれは、幾多の戦いを生き抜いてきたであろう騎士団の経験と知恵の結晶なのだろう。しかし、ニーナの目には、その戦術図が、どこか古臭く、硬直化しているように映った。


「(うーん、確かに典型的な守りの戦術だが……これ、昨日のあの予想外なオオカミ魔物には通用しないパターンじゃないか。相手が飛行型だったり、地中から奇襲してきたりしたら、一発で陣形崩壊するやつだ……)」


ニーナの脳内では、ヴァローナが示した戦術の脆弱性が、まるで問題点を見つける道具が見つけた変なところみたいに、赤い注意マークで点滅していた。


「この戦術の要は、各兵種の連携と、何よりも指揮官の的確な判断だ。状況に応じて柔軟に陣形を変化させ、敵の弱点を突く。そのためには、日々の鍛錬と、過去の戦訓を体に叩き込むことが不可欠となる!」


ヴァローナは、自分の言葉に絶対的な自信を持っているようだった。


ニーナは、思わず口を挟みたくなった。「(あのー、ヴァローナさん?その戦術データ、最後に更新されたの、いつのやり方ですか?と聞きたいんだが……)」


しかし、昨日の一件で、ヴァローナが自分の「経験則」をいかに絶対視しているかは理解している。ここでストレートに指摘しても、また反感を買うだけだろう。


「何か言いたそうだな、小娘」


ニーナの葛藤を見透かしたかのように、ヴァローナが鋭い視線を向けてきた。


「あ、いえ、その……素晴らしい戦術だなぁ、と。ただ、ちょっと気になったんですけど……もし、昨日みたいな、こう……予測不能な動きをする敵が出てきた場合、この陣形って、どう対応するのかなー、なんて」


ニーナは、できるだけ穏便な口調で、ギャル語を控えめに質問を投げかけた。


ヴァローナは、ニーナの言葉にフンと鼻を鳴らした。「予測不能な動き、だと?魔物の行動パターンは、長年の経験からある程度予測可能だ。昨日のあれは、単に数で押してきただけのこと。我々の対応が遅れたのは、不慣れな地形と、こちらの油断があったからに過ぎん」


「(うわー、完全に昨日の予想外の出来事を認めてないし……これぞまさに『思考が固まっている状態』!新しい情報を受け付けない設定になっている!)」


ニーナは、内心で盛大にツッコミを入れた。ヴァローナの経験則という情報には、確かに膨大な量の戦いの記録がたまっているんだろう。しかし、その情報自体が古く、新しい脅威に対応するための「修正プログラム」が適用されていない状態なのだ。


「でも、あの魔物たち、明らかに連携して、こちらの弱点を的確に突いてきたように見えましたが……」


ニーナは食い下がった。


その言葉に、周りの騎士たちの中から、ザワザワとした不満の声が上がり始めた。


「なんだと、小娘!団長の戦術にケチをつける気か!」

「我々は、この戦術で幾度も勝利を収めてきたんだ!素人が口を出すな!」


「(うっ……やはりこうなるか……完全に不利な状況じゃないか……)」


ニーナは、騎士たちの敵意のこもった視線に晒され、思わず身を竦めた。他人の評価を気にする性格が顔を出す。


ヴァローナは、そんな騎士たちを手で制し、再びニーナに向き直った。「貴様の言う『予測不能』とやらは、単に貴様の経験不足から来るものではないのか?戦場では、机上の空論は通用せん。我々は、血と汗で築き上げた経験則を信じるのみだ」


その言葉は、絶対的な自信に満ち溢れていたが、ニーナには、それが逆に彼女の弱さの表れであるように感じられた。「失われた砦」のトラウマが、彼女を過去の成功体験に縛り付け、新たな変化を受け入れることを恐れさせているのではないか、と。


「(この問題……根が深そうだな……改善するには、まず信頼関係を作ることか……?道のり、長すぎじゃないか……?)」


ニーナは、ヴァローナとその騎士たちの、鉄壁のように固い「経験則」という名の壁を前に、深いため息をつくしかなかった。


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