コミット 41:『騎士団駐屯地での初日!ギャルSE、規律と筋肉の世界にドン引き!?』
結局、ニーナはヴァローナ率いる騎士団に「保護」という名目で同行し、彼らの駐屯地へと案内された。街道から少し外れた森の中に築かれたその駐屯地は、質実剛健という言葉をそのまま形にしたような場所だった。高い丸太の柵で囲まれ、見張り台がいくつか設置されている。内部には、簡素な兵舎や訓練場、鍛冶場らしき建物が並び、騎士たちの鬨の声や、金属がぶつかり合う音が絶え間なく響いていた。
「(うわー……ザ・体育会系って感じだな。汗と土埃と鉄の匂いがすごいんだが……)」
ニーナは、そのあまりにも自分の慣れた環境と違う空気に、若干ドン引きしていた。清潔で空調の効いたオフィス、カタカタと響くキーボードの音、そしてエナジードリンクの匂い。それが、前世の彼女の日常だったのだ。
ヴァローナは、ニーナを自分の執務室も兼ねた個室へと案内した。兵舎の一角にあるその部屋は、予想通り、非常に質素で飾り気がなかった。硬そうな木製のベッドと机、そして武具の手入れ道具が整然と並べられているだけ。壁には、騎士団の紋章と思しき旗が掲げられていた。
「ここで待っていろ。後で改めて話を聞く」
ヴァローナはそれだけ言うと、部下たちの報告を聞きに部屋を出て行ってしまった。一人残されたニーナは、とりあえず硬い椅子に腰を下ろし、改めて部屋の中を見回す。
「(まあ、ゴードン村長の家よりはマシだが……プライバシーとか皆無っぽいな、この作りじゃ。壁、薄すぎだろう……)」
窓から見える訓練場では、上半身裸の騎士たちが、これでもかとばかりに丸太を担いだり、重そうな剣を振り回したりしている。その光景は、ニーナにとっては異文化コミュニケーションの極みだった。
「(朝稽古の声、本当にラウドスピーカー並みだったし……ていうか、さっき食堂で見たメニュー、ほぼタンパク質じゃなかったか?栄養バランス、完全に偏っているだろう……!)」
しばらくすると、夕食の時間になったらしく、若い騎士がニーナを呼びに来た。食堂は、野戦病院のようで、木の長テーブルに騎士たちがひしめき合い、大声で談笑しながら食事を貪っている。出された食事は、やはり黒パンと塩味のスープ、そして少量の干し肉と固いチーズ。
「(うげっ……これ、毎日食べるのか……?せめて野菜を……!食物繊維、プリーズ!)」
ニーナは、周りの騎士たちの豪快な食べっぷりに気圧されながら、なんとかパンを齧った。味は……まあ、空腹が最高のスパイス、ということにしておこう。
食事中、騎士たちの会話が自然と耳に入ってくる。
「しかし、今日の魔物は異常だったな。まるで知恵があるみたいだったぜ」
「ああ、団長と、あのダークエルフの嬢ちゃんがいなけりゃ、どうなっていたことか……」
「あの嬢ちゃんの魔法、見たか?なんだか派手な光線みたいなやつ!ありゃ一体、どこの流派だ?」
「(やはり、みんな今日の戦闘には思うところがあるみたいだな……)」ニーナは、自分の使った力がどう評価されているのか、少し気になった。
そんな中、一人の騎士が声を潜めて話し始めた。
「そういえば、聞いたか?この先の大きな街、セブンスターズ・シティの教会なんだが……なんでも、そこの神父様にお布施をすれば、どんな難病も治る奇跡の聖水が手に入るとか、商売がめちゃくちゃ上手くいくとか、そんな噂が立ってるらしいぜ」
「へえ、そりゃすげえな!ご利益ありそうじゃん!」
「ああ。だから、結構な額のお布施が集まってるらしい。俺の知り合いも、それで長年の持病が治ったとか言ってたな……」
「(奇跡の教会……お布施で病気が治る……ねぇ)」
ニーナは、その話に眉をひそめた。前世の知識では、そんな都合の良い話は、大抵の場合、何かしらの「裏」があるものだ。
騎士団での生活は、ニーナにとってカルチャーショックと、新たな疑問の連続になりそうな予感がした。そして、あの石頭の女騎士団長ヴァローナとの関係も、どうなることやら。
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