コミット 39:『連携攻撃(経験&論理)!最強の問題解決コンビ、ここに爆誕!』
ヴァローナがニーナの指示に従い、的確に魔物を仕留めたことで、戦場の流れは明らかに変わり始めていた。他の騎士たちも、団長の戦いぶりとニーナの叫び声から、何かしらの「攻略法」が存在することに気づき始めていた。
「(よし、これでヴァローナさんも俺の言葉を少しは信じてくれるはずだ!ここからは、本格的な連携 (共同作業)だ!) 」
ニーナは深紅のガントレットを構え直し、戦場全体を見渡す。彼女の瞳に浮かぶコード紋様は、まるで高度な戦術シミュレーターのように、魔物たちの動き、騎士たちの配置、そしてそれぞれの魔力残量や疲労度といった膨大な情報をリアルタイムで解析し、最適解を導き出そうとしていた。
「ヴァローナさん、次!左翼の二匹、同時に来るよ!一匹はフェイントで、もう一匹が本命!本命は、あんたの左斜め後ろに回り込もうとしている!」
ニーナの的確な指示が飛ぶ。それは、単なる敵の動きの予測ではない。敵の行動パターンを読み解き、その上で、味方のリソース(騎士たちの能力や位置)を最大限に活かすための「役割分担」だった。
ヴァローナは、もはやニーナの言葉に疑いを挟むことなく、即座に反応した。左翼に展開していた部下たちに鋭く指示を飛ばし、フェイント攻撃を仕掛けてきた魔物を牽制させつつ、自らは身を翻して左斜め後ろへと剣を振るう。
「そこか!」
ヴァローナの剣は、まさにニーナが予測した通りの位置にいた魔物の胸を正確に捉えた。魔物は、完全に意表を突かれたという表情で、絶命する。
「(すごい……!本当に、あの小娘の言う通りに動けば……!) 」
ヴァローナは、ニーナの戦術眼に舌を巻くと同時に、これまで自分が固執してきた経験則がいかに限定的なものであったかを痛感し始めていた。
「騎士の人たち!魔物は攻撃の直前、喉元が一瞬紫に光るみたいだ!私が『光った!』って言ったら、それが合図だから、そこから約3秒後に突っ込んでくる!カウンターで狙って!」
ニーナの声は、戦場全体に響き渡った。騎士たちは、最初は戸惑いながらも、団長のヴァローナがその指示に従って次々と戦果を上げているのを見て、徐々にニーナの言葉を信じ始める。
ここから、戦いの様相は一変した。
ニーナは、戦場全体を俯瞰する「司令塔」のように、的確な情報を各騎士に送り続ける。
「そこの槍の人、右の魔物、次は足元狙ってくるぞ!私が『ジャンプ!』って言ったら回避して、着地際に突きを!」
「盾の人、正面のやつ、ブレス攻撃のチャージ始めたみたいだ!私が『今!』って言ったらシールドバッシュでキャンセルできるかも!」
「弓の人、あの岩陰に隠れてるやつ、他の魔物の死角から援護射撃の準備してる!先に潰して!」
ニーナの指示は、まるで未来予知のようだった。しかしそれは、超能力などではない。魔力の流れを読み、敵の行動パターンを解析し、論理的に導き出された「最適解」だ。そして、その指示を受け取った騎士たちは、それぞれの得意な戦い方で、的確に魔物を処理していく。
ヴァローナは、その連携の中心で、最も危険な敵や、処理の難しい敵を率先して引き受け、その卓越した剣技で次々と屠っていく。彼女の剣筋は、以前のような力任せなものではなく、ニーナの論理的なサポートによって、より洗練され、効率的なものへと変わっていた。迷いが消え、純粋な赤い軌跡を描く彼女の剣は、まるでニーナのガントレットから放たれる青い援護の光の線と、美しくシンクロしているかのようだった。
ニーナはミッドレンジから、ガントレットを使った精密な魔力撃で騎士たちの援護を行う。時には、敵の足元に小さな炎のトラップを仕掛けたり、水の魔力で敵の視界を奪ったりと、多彩な魔法で戦場をコントロールする。
それは、まさに物理攻撃と論理的な魔法の融合。前衛で戦うヴァローナの「経験則」と、後方から戦術を組み立てるニーナの「論理」。二つの異なる強みが、初めて「協調」という形で噛み合い、相乗効果を生み出していた。
「(これが……連携……!これが、誰かと一緒に戦うということ……!) 」
ニーナは、胸が高鳴るのを感じていた。前世では、常に一人で不具合と戦い、誰にも理解されず、責任だけを押し付けられてきた。しかし、今は違う。自分の言葉を信じ、自分の指示で動いてくれる仲間がいる。そして、その結果、強大な敵を打ち破りつつある。
「(悪くない……!全然、悪くないぞ、これは!) 」
まるで複雑なプログラムが完璧に動作した時のような、あるいは難解な不具合を修正できた時のような、強烈な達成感がニーナの心を支配した。
そして、ついに最後の一匹が、ヴァローナの渾身の一撃によって討ち取られた。
戦場には、静寂が戻ってきた。残っているのは、疲弊しながらも、どこか高揚した表情を浮かべる騎士たちと、そして、互いの存在を新たな目で見つめ合う、ギャルSEと女騎士団長の姿だった。
最強の問題解決コンビが、今、この異世界で産声を上げた瞬間だった。
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