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『ギャルエルフ』になった社畜SEの俺、転生先が『バグだらけの世界』だったので『デバッグ』することになりました!――ギャルSEの異世界デバッグ!  作者: AKINA
フィーチャー2:『騎士団長と謎の魔物!?~論理と経験則の衝突、そして協調~』

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コミット 36:『論理魔導《ロジカルマジック》「炎水流《フレイムストリーム》」!これがSE式魔法だ!』

深紅のガントレットを装着したニーナの周囲の空気が、明らかに変わった。以前の彼女が放つ魔力とは比較にならないほど濃密で、それでいて精密に制御された力が、ガントレットから溢れ出ている。ヴァローナは本能的に、それが自分たちの知る魔法の体系とは全く異なる、異質な力であることを感じ取った。


「(なんだ……あの小娘……いや、ニーナと言ったか……あの力は一体……!?)」


ニーナは、ガントレットに意識を集中させる。エレメンタル・ガードナーは、ニーナの論理魔導(ロジカルマジック)による魔力フローの最適化により、その秘められたポテンシャルを解放しつつあった。


「(よし、まずは属性の確認……右手のガントレットは火属性、左手は……これは水属性の魔力親和性が高い!)」


ガントレットの魔力流から、それぞれの腕が得意とする属性を瞬時に把握する。それは、かつて森の中で様々な種類の石ころ(魔石の欠片)を使って論理魔導(ロジカルマジック)の実験を繰り返していた時の経験が活きている。あの時は、それぞれの石が持つ微細な魔力の特性を読み取り、どうすれば効率的に「命令」を伝えられるか試行錯誤したものだ。その経験が、今、この高度なデバイスの特性を直感的に理解する助けとなっていた。


「(火と水……相反する属性だけど、使い方次第では強力な相乗効果を生むはず!)」


SE時代の経験が、ニーナの脳裏に様々なアイデアを浮かび上がらせる。例えば、高温の蒸気による攻撃、あるいは急激な温度変化による脆化。だが、今の状況で最も必要なのは、一点突破の「火力」だ。


「(前方の一番厄介そうなデカブツに狙いを定めて!魔力チャージ開始!)」


ニーナは右手のガントレットを魔物の一体――ひときわ大きく、禍々しい紫の光を強く放つリーダー格と思しき個体――に向けた。ガントレット表面の赤い魔石が、まるで心臓のように鼓動し、周囲の魔力を凄まじい勢いで吸い上げていく。


「(同時に複数の魔力を最大レベルまで増幅させて……よし、タイミングもバッチリ!次に、二つの属性をガントレット内部の仮想チャンバーで混合、そして……圧縮!) 」


ニーナの瞳に浮かぶコード紋様が、かつてないほど複雑に、そして高速に明滅する。左手のガントレットからも青い水の魔力が凝縮され、右手の炎の魔力と合流しようとしていた。


「(まさか、あの二つの属性を融合させるつもりか!?馬鹿な、そんなことをすれば魔力が暴走して……!)」


ヴァローナは、魔法の基本的な知識から、それがどれほど危険な行為であるかを理解していた。通常、相反する属性の魔力を無理に結合させようとすれば、術者自身がその反動で吹き飛ぶのが関の山だ。


しかし、ニーナのやろうとしていることは、単なる魔力の融合ではなかった。それは、SE的な思考に基づいた、精密な「プロセス管理」と「リソース配分」だった。


「――論理魔導(ロジカルマジック)・一連の動作実行!『炎水流(フレイムストリーム)』、発射!!)」


ニーナは、チャージが完了した右手のガントレットを左手で支えるように重ね合わせ、その掌を魔物に向けて突き出した。瞬間、右手ガントレットの赤い魔石と左手ガントレットの青い魔石が共鳴するように激しく輝き、二つの色が螺旋を描きながら融合していく。


そして、次の瞬間――


ゴォォォォォオオオオオオッッ!!!


圧縮された炎と水が、一つの奔流となってニーナの掌から解き放たれた。それは、単なる熱湯ではない。燃え盛る炎の赤と、全てを洗い流す水の青が、互いの特性を打ち消し合うことなく、むしろ相乗効果で威力を増幅させながら、超高圧の螺旋水流となって魔物へと襲いかかったのだ。


美しい、とすら思える光景だった。赤と青の光が複雑に絡み合いながら、まるで生きている龍のように空間を疾走する。


「ギ……ギャアアアアアアアアア!?」


リーダー格の魔物は、その未知の攻撃に反応する間もなかった。炎水流は、魔物が展開していた禍々しい紫色の光の障壁を、まるで熱したナイフがバターを切るように容易く貫通し、その巨体を真正面から捉えた。


灼熱と水圧の同時攻撃。魔物の黒紫色の体毛は一瞬で蒸発し、頑強なはずの肉体は爆ぜ、断末魔の叫びは途中で途切れた。そして、魔物がいた場所には、水蒸気と焦げ臭い匂い、そして地面に穿たれた大きなクレーターだけが残されていた。


一撃。たった一撃で、あの強大な魔物を完全に消滅させたのだ。


戦場に、一瞬の静寂が訪れる。


他の魔物たちは、目の前で起きた信じられない光景に怯え、動きを止めている。騎士たちもまた、ニーナが放った規格外の魔法の威力に、ただただ絶句するしかなかった。


「(……はぁ、はぁ……やった……!思った以上の威力……!でも、魔力消費もハンパない……!)」


ニーナは肩で息をしながら、ガントレットから立ち上る余熱の湯気を見つめていた。エレメンタル・ガードナーは、まだ彼女の魔力に完全には馴染んでいない。今の攻撃は、まさに「フルパワー」であり、連発できるものではなかった。


「(でも、これで少しは戦局が変わるだろう!)」


ニーナは不敵な笑みを浮かべ、残りの魔物たちを睨みつけた。SE式魔法の威力、とくと味わってもらおうじゃないか。

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