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『ギャルエルフ』になった社畜SEの俺、転生先が『バグだらけの世界』だったので『デバッグ』することになりました!――ギャルSEの異世界デバッグ!  作者: AKINA
フィーチャー2:『騎士団長と謎の魔物!?~論理と経験則の衝突、そして協調~』

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コミット 35:『エレメンタル・ガードナー起動!「見えないサブ回路」、オーバーライド開始!』

絶体絶命。その言葉が、今のヴァローナの状況を的確に表していた。四方八方から迫る魔物の牙と爪。いくら歴戦の騎士団長といえども、この完璧な包囲網から無傷で脱出するのは不可能に近い。他の騎士たちも、それぞれの持ち場で手一杯で、ヴァローナに援軍を送る余裕はない。


「(くそっ…… ここまで、なのか!?)」


ヴァローナの脳裏に、再び「失われた砦」の光景がよみがえる。部下たちの顔、親友の顔、そして自分の無力さ。


その時だった。


「――あーもう、見てらんないっつーの! 許可とか言ってらんないでしょ、この状況!」


場違いなほど明るい、しかし切羽詰まった声が響いた。ニーナだ。彼女は、先ほど魔物に石を投げつけた場所から、ヴァローナと魔物の群れを睨みつけるように立っていた。その小さな両手は、何かを強く握りしめているように見える。


そして、次の瞬間、ニーナの耳元で揺れるシンプルな赤い宝石のイヤリングが、閃光と呼ぶには淡すぎる、しかし確かな光を放った。


「(この世界のデバイスって、基本、固定回路で決められた機能しか使えないんだったよな?でも、それじゃこのイレギュラーな状況には対応できない! だったら……!)」


ニーナの脳裏に、前世で慣れ親しんだデバッグ画面が展開される。目の前のイヤリング型デバイス「エレメンタル・ガードナー」の魔石内部に存在するであろう、固定化された魔導回路の構造を、彼女の鋭敏な魔力感知能力とSE的思考が強引に解析していく。


「(このイヤリングの魔石、火属性の魔力を増幅・変換する基本回路は持っている。でも、それだけじゃ単発の炎を出すくらいしかできない。もっと…… もっと効率的に、今の状況に対応できる形に、魔力のフローを最適化しないと!)」


ニーナの瞳が、青白いコード紋様で激しく明滅する。彼女は、デバイスの「設計図」にアクセスしようとしているのではない。そんなものは存在しない。そうではなく、魔石そのものが持つ「性質」と、そこに刻まれた「既存の回路」を理解し、その上で、自分の論理魔導(ロジカルマジック)という「外部プログラム」によって、魔石の機能を一時的に「上書き」しようとしているのだ。ニーナの論理魔導(ロジカルマジック)による強制上書きの試みが、図らずもエレメンタル・ガードナーの真の機能である形態記憶相転移を司る魔導回路を呼び覚まそうとしていた。


「(固定回路の隙間…… 『見えないサブ回路』とでも言うべき魔力の流路を、俺のロジックで強制的に生成、重ね書きする! デバイスの潜在能力を、限界まで引き出す!)」


それは、本来のデバイスの使用方法からは大きく逸脱した、禁じ手とも言える荒業だった。下手をすれば、魔石が暴走するか、最悪の場合、ニーナ自身の魔力が逆流して致命的なダメージを負う可能性すらある。


しかし、今のニーナに迷いはなかった。目の前でヴァローナが死にかけている。そして、この世界の「不具合」が、これ以上猛威を振るうのを見過ごすわけにはいかない。


「――エレメンタル・ガードナー、強制起動(フォースブート)! 魔力フロー最適化(リファクタリング)、開始!」


ニーナが叫ぶと同時、イヤリングが眩いほどの赤い光を放った。その光は、まるで生きているかのようにニーナの腕へと伸び、絡みつき、瞬く間に彼女の両腕を覆う深紅のガントレットを形成していく。ガントレットの表面には、まるで集積回路のような複雑な文様が青白く浮かび上がり、それはまるで呼吸するかのように明滅を繰り返している。


「(なっ……なんだこれは……!? イヤリングが……ガントレットに……!?)」


予想外の現象にニーナは驚愕する。しかし、ガントレットから、以前とは比較にならないほど強力で、そして制御された魔力が流れ込んでくるのを感じた。これは、単なる魔力増幅ではない。ニーナの意志とロジックに応じて、魔力の流れをより高度にコントロールできる、洗練された魔導回路が組み込まれたデバイスへと変貌を遂げたのだ。それは、魔石が持つ形態記憶相転移の特性が、ニーナの規格外の魔力操作に呼応し、本来の機能を解放し始めた証だった。


「(なんだかよく分からないが、ここからが本番だ! このひどい状況、いっちょデバッグしてやるぞ!)」


深紅のガントレットを構えたニーナの顔には、不敵な笑みが浮かんでいた。それは、絶望的な不具合に立ち向かう、不屈のSEの顔だった。


ヴァローナは、突如として戦場に現れたその異様な光景に、そしてニーナから放たれる強大な魔力の奔流に、ただただ目を見開くしかなかった。小娘だと思っていた存在が、今、自分たち騎士団すら及ばないかもしれない、未知の力を発現させようとしていた。

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