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『ギャルエルフ』になった社畜SEの俺、転生先が『バグだらけの世界』だったので『デバッグ』することになりました!――ギャルSEの異世界デバッグ!  作者: AKINA
フィーチャー2:『騎士団長と謎の魔物!?~論理と経験則の衝突、そして協調~』

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コミット 33:『アナログ戦闘vsイレギュラー魔物。あーもう!だからそのやり方じゃ無理だって!』

ヴァローナの「保護」という名の強制的な同行を受け入れ、ニーナは騎士団と共に街道を進んでいた。先ほどの戦闘で討ち漏らしたのか、あるいは新たな群れなのか、再びオオカミ型の魔物が姿を現した。その数は先程よりも少ない五匹だったが、やはりその動きには不気味な統率力と、獲物を(なぶ)るような知性を感じさせた。魔物たちの体からは、依然として禍々しい紫色の光の線が不規則に明滅し、周囲の魔力を歪めている。それはまるで、コンピューターウイルスがシステム内部で自己増殖し、正常なプロセスを阻害しているかのように見えた。


「(やっぱりだ…… こいつらの動きのパターン、さっきの奴らと酷似している。単なる偶然じゃない。明らかに何らかの異常な『行動のパターン』が存在する!) 」


ニーナは魔物の動きを注意深く観察しながら分析する。


「各員、陣形を崩すな! 定石通りに追い詰めろ!」


ヴァローナの鋭い声が飛ぶ。


騎士たちはヴァローナの指示に従い、盾を構え、槍を突き出し、伝統的な包囲殲滅陣形を取ろうとする。それは確かに、通常の獣や、これまでの経験則に基づけば有効な戦術なのだろう。しかし、相手は「イレギュラー」な魔物だ。


「(あー、もう!だから、その昔ながらのやり方じゃ無理だと言っているだろう! 相手の行動パターン、完全にこちらの予測をはるかに超えているぞ!) 」


ニーナは内心で叫んだ。見ていられなくて、思わず声に出そうになるのを必死で堪える。


案の定、騎士たちの動きは魔物たちにことごとく読まれていた。一匹の魔物が陽動のように正面から突っ込むと見せかけ、騎士たちが防御を固めた瞬間、残りの魔物が一斉に左右の死角から襲いかかる。その連携は、まるで熟練の傭兵団のようだ。


「ぐあっ!」


一人の若い騎士が、魔物の鋭い爪による不意打ちを受け、盾ごと弾き飛ばされた。幸い軽傷で済んだようだが、陣形に一瞬の隙が生じる。


「(ほら見たことか! 完全に昔ながらのフェイントに引っかかっているじゃないか! こいつら、騎士団の戦い方を事前に学習しているとしか思えないんだが!) 」


魔物たちは、騎士たちが繰り出す槍や剣の攻撃を、まるで嘲笑うかのように最小限の動きでかわし、的確に反撃を加えてくる。さらに厄介なことに、魔物の体表を覆う禍々しい紫色の光の線は、時折、物理的な障壁のように機能し、騎士たちの剣撃を弾き返していた。


「(あの紫色の光…… 魔力の流れの異常が複雑になった結果、防御フィールドみたいなものを形成しているのか? 魔力密度も異常に高いし、だからあんなにタフなわけだ……!) 」


ニーナの目には、騎士団の攻撃が、魔物の周囲にまとわりつく歪んだ光の障壁によって威力を殺がれ、あるいは空しく空を切る様子がはっきりと見えていた。それはまるで、セキュリティの壁の設定ミスで、本来通すべきものまでブロックされてしまっているような、もどかしい状況だった。


「おのれ、化け物めが!」


ヴァローナ自身も馬上で剣を振るい、次々と魔物を斬り伏せていく。彼女の剣技は確かに超一流だ。しかし、魔物の数が多く、しかも個々の耐久力が高いため、ジリ貧に陥りつつあった。


「(ダメだ、このままじゃ消耗戦になるだけだ……! ヴァローナさんの戦い方は、個の強さに依存しすぎている。システムの弱点を突かれているのに、力任せで解決しようとしている典型的なパターンだ!) 」


ニーナは、前世で何度も経験したプロジェクト炎上の光景を思い出していた。個々のプログラマーは優秀でも、全体の考え方が古かったり、未知の問題に対応できなかったりして、泥沼にはまっていくプロジェクト。今の騎士団の戦いは、まさにそれだった。


「(せめて、あの紫の防御フィールドをどうにかできれば……! あれは、魔力の異常な集中によるもののはず。なら、論理魔導(ロジカルマジック)でその流れを強制的に『正常な流れに戻す』すれば…… いや、待てよ?) 」


ニーナの脳裏に、新たなロジックが閃く。「(あの防御フィールド、常に同じ強度じゃない。魔物が攻撃する瞬間、一瞬だけ薄くなっている……? まさか、攻撃と防御で同じ力を使い合っているのか?だとしたら、反撃のチャンスがあるはず!) 」


しかし、その分析結果をヴァローナにどう伝えればいいのか。先程のやり取りを考えれば、まともに取り合ってくれるとは思えない。


「(あーもう、歯がゆい! 見ているだけなんて性に合わないんだが!でも、下手に口出ししたら、また『小娘の戯言』で一蹴されるのがオチか……?) 」


他人の評価を気にする傾向が、またしてもニーナの行動を縛ろうとする。しかし、目の前で苦戦する騎士たちを見ていると、そんな葛藤も吹き飛びそうだった。SEの性として、目の前の「不具合」を放置することなどできないのだ。

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