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異世界システム、ギャルSEがデバッグします!  作者: AKINA
フィーチャー1:『異世界転生、ギャル爆誕!~SEの常識は異世界の非常識?~』
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コミット 3:『異世界魔法=レガシーシステム?この魔力の流れ、マジで非効率すぎ!』

村長のゴードンさんの家に厄介になること数日。

私はニーナとして、村の生活に少しずつ馴染み始めていた。

もっとも、馴染んでいるのは見た目だけで、中身(つまり斉藤肇)は相変わらず混乱とツッコミの連続だったが。


村人たちは驚くほど協力的で、食料や寝床の心配はなかった。

特に村の若い男たちは、何かと理由をつけては私に話しかけてきたり、手伝いを申し出てきたりする。

その度に愛想笑いを振りまき、内心で「(お前ら、そんなにギャルが珍しいのか!)」と毒づく日々だ。

この過剰な親切が、私の美貌(という名の予期せぬ仕様)のせいなのか、それとも何か別の要因があるのか、まだ判断がつかない。


そんなある日の午後、私は村の広場で奇妙な光景を目撃した。


広場の中央で、一人の若い男――確か、名前はルークとか言ったか――が、何やらブツブツと呪文のようなものを唱えながら、手のひらに持った小さな石ころに意識を集中させていた。

石ころは淡い光を放っている。魔石、というやつだろうか。

この世界には魔法が存在しており、魔石に魔力を加えることで扱うことができる、とは村人から聞いていたが、実際に目にするのは初めてだった。


「(お、あれが魔法か。ファンタジー世界の定番イベントだな。どんな派手なエフェクトが見られるんだ?)」


内心少しワクワクしながら見守っていると、ルークの額に汗が滲み、顔が苦悶に歪んでいく。

魔石の光は強まったり弱まったりを繰り返し、安定しない。

まるで、処理能力が限界に達して動きがカクカクしている古いパソコンのようだ。


やがて、十数秒ほど経っただろうか。

ルークが「はあっ!」と気合を入れると同時に、魔石から小さな火の玉がぽん、と飛び出した。

火の玉は勢いなく数メートルほど飛び、地面に落ちてすぐに消えてしまった。


「………。

………え? それだけ?」


思わず心の声が漏れそうになるのを必死で堪える。

あれだけ苦労して、結果があの豆鉄砲みたいな火の玉一つ? 冗談だろ?


ルークは肩で息をしながらも、満足げな表情を浮かべていた。

周囲で見ていた他の村人たちも、「おお、やったな!」「すごいじゃないか!」と彼を称賛している。


「(……マジか。この世界の魔法レベル、低すぎないか?)」


前世でプレイしたゲームの魔法の方が、よっぽど派手で効率的だったぞ。

私のSEとしての脳が、目の前の現象を勝手に分析し始める。


「(あのルークって奴、魔石に魔力を込めるのに必死だったけど、明らかにエネルギーの無駄が多い。魔力の流れがあちこちに漏れ出しちゃって、実際に魔法として変換されてるエネルギーはごく僅かだ。まるで、無駄な処理が多いプログラムみたいだぞ……)」


この身体になってから、時折、不思議な感覚を覚えることがあった。

それは、空気中や、時には物質そのものから、微かな「流れ」のようなものを感じ取る力。

今も、ルークが魔法を使った瞬間、彼の身体から魔石へと向かう、ぼんやりとした光の帯のようなものが見えた。

そして、その光の大半が、魔石に吸収されることなく霧散していくのも。


「(あれが魔力ってやつか? だとしたら、あの魔石はエネルギー変換器か何かで、魔力を特定の現象に変換するんだろうけど……だとしても、あの変換効率の悪さは致命的だ。まるで、設計が古く、拡張性もない、時代遅れのシステムそのものじゃないか?)」


この世界の魔術師(と呼べるほどのものかは疑問だが)は、魔力の流れを正確にイメージして操作するというより、ただひたすら魔力を「押し込む」ことしか考えていないように見えた。

例えるなら、ON/OFFスイッチとボリュームコントロールだけで、複雑な機械を無理やり動かそうとしているようなものだ。


「(もし、魔力の流れを……エネルギーの流れを設計して、意図した通りにコントロールできたら? 各魔石の特性に合わせて、最適なタイミングで、最適な量の魔力を、最適な経路で供給できたら……?)」


私の頭の中に、前世で散々眺めてきたネットワーク図や、処理の流れを図示したフロー図が浮かび上がる。

そうだ、魔法だって一種の情報処理システムだ。

入力(魔力)、処理(魔石・術式)、出力(魔法効果)。

ならば、そこに最適化の余地がないはずがない。


「(この魔力の流れ、無駄が多すぎて、もはや芸術の域かもしれんが……だとしたら、俺の出番じゃないか?)」


システムエンジニアの血が騒ぐ。

目の前にあるのは、改善の余地しかない、巨大な旧式システム。

そして、それを攻略できるかもしれないという、抗いがたい魅力。


「(……面白い。実に、面白いじゃないか、この世界!)」


唇の端が、自然と吊り上がるのを感じた。

それは、三十八歳の社畜SE・斉藤肇が長らく忘れていた、純粋な知的好奇心と、創造への渇望が蘇った瞬間だったのかもしれない。

最後までお読みいただき、ありがとうございます!


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